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女性店主奮闘 コロナに負けず 和歌山のちょうちん店 300年の伝統守る

 和歌山市中心部の商店街・ぶらくり丁に、創業から332年を迎えた老舗ちょうちん販売店がある。1人で切り盛りするのは、第11代店主の滝幸子さん(62)。今年は新型コロナウイルスの感染拡大が響き、祭り向けを中心に注文が半減している。それでも「伝統を絶やしたくない」と、家業を守り続ける決意だ。

 6月中旬、JR和歌山市駅から約700メートルの場所にある「滝ちょうちん店」。店内には「居酒屋」「お好み焼き」などと書かれた赤ちょうちんや、神様に供える品々が、数多くつるされたり置かれたりしている。

 奥の座敷で真一文字に口を結んだ滝さんが、仕入れた無地のちょうちんを手に取った。木の枠組みに貼った和紙の表面には凹凸があるが、さらさらと筆で文字を記す。「ようやく、納得のいく商品に仕上げられるようになってきた」

 江戸時代の1688年に創業した店は当初、雨具を中心に取り扱っていたらしい。傘に文字や家紋を入れて販売していたといい、その技能を、ちょうちんにも生かすようになった。

 先代の一人娘だった滝さんは、幼少期から家業を手伝っていた。大学を卒業し特別支援学校の教諭をしていたが、33歳の時、後を継いだ。「10代続いた店を終わらせるのは、両親に申し訳ない」と、腹を決めた。

 1990年代、バブル経済の崩壊に伴う長い景気低迷期に入る。コンビニエンスストアなどで安く売られるビニール傘の消費に押され、振るわなくなった傘の販売をやめた。「地域で祭りが続く限り、欠かすことのできないちょうちんの需要は見込める」と事業を絞った。10年前からは、客が文字や絵を入れてオリジナル商品を作ることができる機会を設けた。

 例年は、6月から10月にかけてが書き入れ時。和歌山県内や大阪府内の祭りで飾られるちょうちんの出荷に追われる。でも今年は、コロナ禍で祭りの中止が相次ぐ。「寄せられた注文に感謝し、満足してもらえるよう仕上げるだけ」。一層の思いを込めて、筆を執る。

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