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路面電車の生き残り 阪堺電気軌道に見る再生 (2/2ページ)

 観光で価値

 この秋に支援は終了し、これまで210円だった運賃は230円に値上がりすることが決まった。「目的地によっては(近くを走る)南海(電鉄)を使う方が早く着けて、阪堺と運賃の差もない、ということが起きるのでは」と利用者の堺市堺区の会社員女性(48)は話す。阪堺の担当者は「安いからと乗車してくれる人もいる。将来的には人の流れが変わる可能性もある」と懸念する。

 では、支援終了後の路線活性化に必要な条件は何か。阪堺では「知らない人に知ってもらう、乗ってもらう取り組みは必要だ」と話す。つまり、観光客の利用増をもくろんでいる。

 路面電車に詳しい関西大学の宇都宮浄人(きよひと)教授(交通経済学)も、観光客の足としての路面電車は「知らない土地での移動手段として網の目のような路線バスよりも心理的に利用しやすい」と指摘する。

 阪堺沿線のうち高須神社-御陵前区間は一部に古い町並みが残る堺の旧市街地「環濠エリア」を走る。沿線を離れるものの、世界遺産登録された百舌鳥(もず)・古市古墳群を構成する仁徳天皇陵古墳(大仙古墳、堺区)もある。コロナ禍で先は見えない状態だが、阪堺はこういった観光資源を電車を利用して巡ってもらえるように、市と意見交換を続ける。

 川勝教授は「阪堺の自立を促すために始まった支援は一旦リセットされる。ここからは市民は利用することで支え、市はまちづくりのパートナーとして阪堺を活用し、阪堺も観光客誘致などで市との連携を深めることが求められる」と期待を込める。

 地域に愛される路面電車として生き残れるのか。阪堺は正念場を迎えている。

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