政府の観光支援事業「Go To トラベル」が22日始まるが、東京都民が対象から外されるなどしたことで、東京からの客が多い関西の宿泊業界にも落胆が広がっている。とはいえ、同事業が集客の底上げにつながるとの期待はなお強い。業界は、新型コロナウイルスに対する安全性を訴えたり、東京から関西へ旅行の目的地を切り替える近隣客を取り込んだりする取り組みを進める考えだ。(田村慶子)
「思ったより盛り上がりに欠けるかもしれない。東京では新型コロナウイルスの感染者が増えており、(今後、東京も割引対象となるのか)先行きが見えない」
大阪市内のあるホテル関係者は、こう漏らす。
トラベル事業は、どういう旅行が割引対象になるかの基準などがあいまいで、観光関連業者の不安は強い。JATA(日本旅行業協会)が今月21~26日にかけ、東京、大阪など全国7カ所で予定する事業者向け説明会には申し込みが殺到し、「10分ほどで満席となった枠もある」(関係者)。大阪市では、当初予定していた2回を3回に増やすことになった。
ただ、「Go To トラベル」を追い風に、都民でない人や、東京旅行をやめた人の関西旅行が増える期待はあり、宿泊業者は誘客へ知恵を絞る考えだ。
18日、築93年の小学校校舎を一部保全した客室や大広間などを公開した「ザ・ゲートホテル京都高瀬川by HULIC(バイ ヒューリック)」(京都市中京区)は、「Go To トラベル」が始まる前日の21日に開業する。場所は祇園や錦市場などが集まる京都市の中心部だ。
系列ホテルが東京都内にあり、認知度が高い東京など首都圏から誘客を狙っていたため当てが外れたが、施設にはテラスや校庭をいかした芝生の広場など開放的な空間が多く、総支配人は「館内での感染対策と合わせアピールできる」と話す。開発を手がけたヒューリックの高橋則孝常務執行役員も「東京が除かれたのは残念だが、そこから人が来ないことが一定の安心感も与える」と述べた。
一方、「Go To トラベル」用に館内の温浴施設やレストランを合わせた宿泊プランを計画しているのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市此花区)の公認ホテル、リーベルホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(同)だ。
担当者は「旅行を楽しみたい人はいるが、感染拡大への心配もある」としており、ルームサービスや持ち帰りのサービスを充実させて、館内で滞在する楽しみを提案する。
また、ロイヤルホテルは「東京除外」が決まる前から、訪日客がなくなる中で宿泊客の中心が関西圏からの人となっていた。今回の決定でこの流れが続くとみて、「何度もリピートしてもらえるよう、魅力を地元に再発見してもらうプランを練りたい」としている。