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九州豪雨で球磨焼酎も危機に 蔵元が仲間に支えられ再建へ

 熊本県南部を中心に九州に甚大な被害をもたらした豪雨で、熊本にある人吉・球磨(くま)地域の特産「球磨焼酎」の蔵元なども深刻な打撃を受けた。約500年の歴史を誇り、地名を冠することができる世界的なブランド。再建への歩みは緒についたばかりだが、流通や販売を含む関係者らが互いに協力し、難局を乗り越える。(前原彩希)

 芳醇(ほうじゅん)な香り、やさしい口当たりと深いコク-。球磨焼酎は国産米のみを原料として人吉・球磨地域の地下水で仕込んだもろみを蒸留し、瓶詰めした米焼酎だ。

 寒暖の差や球磨川水系を背景とした当地ならではの風土が酒造りに生かされており、国税庁から平成7年に産地呼称が認められた。スコットランドの「スコッチウイスキー」やフランス・ボルドー地方の「ボルドーワイン」とともに国際的にブランドが保護されている。

 球磨焼酎酒造組合によると、人吉・球磨地域で27の蔵元が酒蔵を構える。このうち3つの蔵元が、製造が困難な状態に陥った。

 同県人吉市下林町の「合資会社 大和一(やまといち)酒造元」は流れ込んだ濁水によって、1年分の出荷量に相当する原酒約2万リットルが流出する被害を受けた。代表社員の下田文仁さん(53)は4日早朝、浸水に備え、低い場所のタンクの焼酎をより高いタンクにポンプで移す作業を急いだ。それが終わった午前8時ごろ、突如、製造場の扉を破った大量の水が押し寄せた。

 下田さんは、蔵の向かいにある自宅2階に避難。水位が上昇し、タンクや蒸留器などの備品が流れ出していくさまを見つめるしかなかった。午後6時ごろ、水が引き蔵を確認しに訪れた下田さんの目に飛び込んだのは、変わり果てた蔵の様子だった。

 明治時代からあるという麹をつくる麹室(こうじむろ)も浸水した。下田さんは「蔵に住みつく微生物が働いて焼酎の味が決まる。それがやられてしまった」とうなだれる。

 途方に暮れる中、翌日には、ほかの蔵元の仲間10人以上が片付けの手伝いに駆け付け、水につかった焼酎の瓶を運び出すなどした。以降も関係者が次々に支援を申し出た。いまだ復旧のめどは立たないものの、「会社を閉じるわけにはいかない。一歩ずつ着実に、前に進んでいきたい」とあきらめない。

 同組合の田中幸輔専務理事(66)は「自己資金だけで再建するのは難しい。行政からの支援を働きかけつつ、組合としても支えていきたい」と話す。組合のホームページでは、10日から義援金も募っているという。

 球磨焼酎の卸問屋「合資会社鳥越商店」が運営する直販店「一期屋(いちごや)」も1階部分が浸水し、被害は販売網にも及んだ。同商店の代表社員、鳥越英夫さん(52)は蔵元の被害に触れつつ、「チームワークはできている。一緒に再建を目指していきたい」と誓った。

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