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セブン&アイ巨額買収 相乗効果の一方、コロナ禍での危うさも

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、米セブン-イレブンを通じてガソリンスタンド併設型のコンビニエンスストアを運営するスピードウェイを210億ドルで買収することが決まった。屈指の大型買収に踏み切った背景には、成長余地の見込める米国市場でライバルを引き離す狙いがある。一方、新型コロナウイルス禍で個人消費が伸び悩む中、統合効果の実現を疑問視する声もある。

 「グループの成長原動力は国内外コンビニ(事業)で、米国は成長を牽(けん)引(いん)するドライバーだ」。セブン&アイHDの井阪隆一社長は3日の会見で、今回の巨額買収の意義を強調した。折に触れて北米市場の有望性に言及してきた井阪氏には今回の買収は「千載一遇のチャンス」と映った。

 買収にこだわった要因の一つが相乗効果だ。米セブンは積極的なM&A(企業の合併・買収)で店舗網を広げてきたものの、スピードウェイとは出店地域の重複が少ない。また米国の消費者の生活必需品であるガソリンの販売はセブンも手掛けるが、スピードウェイの1店舗当たり販売量はセブンの1・5倍にあたる。

 国内市場ではコンビニ上位3社で約9割のシェアを確保するのに対し、米市場は個人経営が多く、昨年12月末の米国のコンビニ店舗数15万2720店のうち65・4%が10店舗以下のチェーンだ。店舗数1位の米セブンでさえシェアは5・9%にとどまり、上位10社合計でも2割に届かない。セブンはこの“余白”が北米市場の成長力とみる。

 欧米メディアによると、スピードウェイには米国内のコンビニ店舗数で2位のアリメンテーション・カウチタードも関心を示していた。今回の買収が決まり、セブンはライバルに差をつけることになる。

 だが、今回のスピードウェイ約3900店を手中に収めるため投じた約210億ドルは、17年に米アマゾン・コムが米高級食品スーパー、ホールフーズ・マーケット(約460店)を買収した137億ドルをはるかに上回る巨額の投資だ。

加えてセブン&アイHDの国内の百貨店やスーパー事業は構造改革の真っただ中だ。「中長期的にみると(規模拡大による)コスト削減などのメリットはある」(大手証券関係者)とはいえ、コロナ禍による外出自粛などで個人消費の機会が減るなど事業環境の厳しさが増す中、財務を圧迫する今回の大型買収はリスクを伴う。

 井阪氏は「アフターコロナで求められることは何かを自問自答している」としながらも「コロナは永遠に存在するわけではない。5年後、10年後を考えればメリットがある」と語った。(日野稚子)

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