リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

ぜんち共済・榎本重秋社長(2-1)人本・健康経営で100年企業目標 (2/2ページ)

 ウェブ対応を強化

 --18年度からの新5カ年計画の目標は

 「契約数6万件、収入保険料13億円、ソルベンシーマージン(支払い余力)比率1300%を超えるという目標を立てた。商品説明会やセミナーなどによる営業職員の直接販売や保険代理店販売の比率が多かったが、最近はウェブなどによるダイレクト販売、つまりホームページからの資料請求やウェブ申し込みによる加入が増え、約6割を占めるようになった。このためウェブマーケティングのさらなる強化によって地域で生活する障害者の加入を狙う」

 --新型コロナウイルス感染拡大への対応は

 「ウェブマーケティングでの保険募集の可能性が見えてきたので、オフラインとオンラインのハイブリッド型営業手法の構築に取り組む。コロナ禍でイベントなどの中止が相次ぎ、オンライン営業を重視せざるを得ない事情もある。実際、2月に札幌市で人気講師を招いてセミナーを開催する予定だったが中止した。しかし最新情報がほしい人たちから感染リスクを避けられるオンラインセミナーの開催を求める声があり、7月29日に『障害のある人の親なきあと』をテーマにオンラインセミナーを開催し、過去最多の300人強が聴講した。オンライン相談も始める予定だ。届けたい人に届けたい情報を発信していく」

 --会社経営で大切にしていることは

 「経営ビジョンである『100年先も社会の発展に大きく貢献するため、誇りと働きがいのある社員幸福度ナンバーワン企業を目指す』のもと、人本経営・健康経営を実践する。100年続くためには、社員を育て大切にすること、次世代につながる後継者を育てること。このため人本経営を掲げ、働きやすく、働きがいのある職場環境づくりに向け、コミュニケーションの活性化や人事評価の見直しなどに着手。『人を大切にする経営』とは何かを社員同士で常々議論し模索している」

 「急激な事業拡大を目指さないことも大事にしている。会社を無理に大きくするのではなく、大木の年輪のように少しずつ、ゆっくりと成長していきたい。また環境変化への対応も間違いなく問われるので、変化に耐えられる財務体質を築くことにも力を入れていく」

 コロナ危機にぶれず

 --100年企業への株主の理解は

 「会社設立に向けて資金集めに苦労していたとき、最後の頼みとして再保険手配の支援業務を手掛ける会社社長にお願いしたら『あなたのやるべきことは金集めではない。一日も早く知的障害者のための保険会社を創ることだ。金はすべて出す』といわれた。さらに累損解消(13年度)が見えたとき『この株式はあなたが持つべきだ』と当時の株価通り、しかも返済期限なしで株式を譲渡してくれた。これで私が筆頭株主になった」

 「株主配当は4年前の10周年記念配当に続き今年が2回目だが、この株主は前回同様、『投資したのは配当を期待しているからではない。内部留保などに努め、知的障害者のために永続する経営基盤を築くことだ』といって配当を拒否した」

 --ステークホルダー(利害関係者)の理解・応援もあって、順調に来ているのでは

 「その通りで、コロナ危機に見舞われて不安な面もあるが、経営を揺るがすまでにはいかないと自信を持っていえる。ぶれることなく事業を進めてきたからだ。神奈川県中小企業家同友会での活動を通じて学んだ経営理念、社是、行動規範による経営を愚直にこだわって実践してきたかいあって、集まった社員に考え方が浸透、経営と同じベクトルで考え、動いてくれている。あるとき、金融庁の保険企画室長が取材で『(少額短期保険会社が誕生した)保険業法改正で一番良かったことは』と聞かれ、『ぜんち共済ができたこと』と答え、われわれの存在を評価してくれた。障害者支援を生涯の仕事にすると決めたことは正しかったと実感している」

【プロフィル】榎本重秋

 えのもと・しげあき 明治大商学部卒。1989年AIU保険(現AIG損害保険)入社。2000年チューリッヒ保険に入社し、ぜんち共済の前身となる全国知的障害者共済会立ち上げに参画。04年日障マネジメント取締役。06年ぜんち共済を設立し社長。10~13年日本少額短期保険協会会長。54歳。東京都出身。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus