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総合商社が苦渋の中計修正 コロナ禍で各社達成困難の様相

 新型コロナウイルス感染拡大による景気後退は、総合商社の業績に大きな打撃を与えている。各社とも単年度計画に加えて、3カ年の中期経営計画を重視しているが、新型コロナ以前の景気拡大期の立案がほとんどで、経済の前提条件が全く異なる。デジタル化推進など目指すべき方向性は維持するが、中計で示した定量目標の達成は事実上、困難で修正を余儀なくされそうだ。

 2021年3月期が最終年度となるのが住友商事と双日だ。住商は新型コロナの影響でこの期の最終利益の予想を公表していない。中計では、最終年度に株主資本利益率(ROE)10%以上を掲げるが、目標達成には3000億円以上の最終利益が必要。20年3月期比8割増の高成長が欠かせない計算で、「定量目標達成は厳しい」(為田耕太郎執行役員)のが実情だ。双日は中計での750億円の最終利益目標に対し、21年3月期は400億円の予想で「未達」(渋谷誠経営企画担当本部長)だ。

 22年3月期を最終年度とする三菱商事は最終利益9000億円、丸紅が3000億円を目標に設定。三菱の堀秀行経営企画部長は「中計は全体パッケージ」として構造改革を進めていく方針だが、9000億円目標は「今のままでは難しい」ともいい、定量目標の修正もあり得そうだ。

 20年3月期に1974億円の最終赤字となった丸紅の一月正史・経営企画部副部長は、「目標は崩していないが、相当高いハードル」との認識を示す。当面は21年3月期目標の1000億円達成に集中する。

 21年3月期が初年度となった三井物産は、最終年度の23年3月期に最終利益4000億円の目標を掲げる。20年3月期の3915億円に対しほぼ横ばいだが、阿久津剛執行役員は新型コロナの影響で落ち込んだ収益力を、「中計期間に元の水準まで戻すため」と説明。その上で、環境と健康分野など非資源分野を強化する方針を示した。

 コロナ禍の中計で際立った対応を見せたのが伊藤忠商事だ。当初は21年3月期が最終年度の計画だった。最終利益5000億円を目標にしたが、20年3月期までの2年間でこれを達成。中計を20年3月期で前倒しで終了させた。21年3月期はコロナ禍の1年計画として最終利益4000億円と、1株当たり88円の年間配当という「2つだけのコミットメント(約束)」(業務部の原田和典氏)を掲げる。

 各社ともに、経営をITで改革・刷新するデジタルトランスフォーメーション(DX)の強化や、食料など生活密着事業の強化といった構造改革を中計で打ち出す。この方向性は変えない方針だが、商談の大半がストップするなど厳しい状況が続く中、改革の実現も暗雲が漂う。(平尾孝)

 総合商社各社の3カ年中期経営計画

 社名 定量目標(上段)と計画に対する評価(下段)

 ・三菱商事

 最終年度の2022年3月期に最終利益9000億円

 21年3月期予想は未定。現状では達成は難しく、修正の可能性あり

 ・伊藤忠商事

 21年3月期を最終年度として最終利益5000億円

 既に計画目標達成で20年3月期で前倒し終了。21年3月期は1年計画に

 ・三井物産

 21年3月期が初年度で、23年3月期に最終利益4000億円

 20年3月期実績とほぼ同水準。コロナ危機による落ち込みから回復へ

 ・住友商事

 21年3月期が最終年度でROE(株主資本利益率)10%以上

 21年3月期予想は未定。ニッケル事業減損などで計画達成は厳しい状況

 ・丸紅

 22年3月期の最終利益を3000億円に

 21年3月期予想が最終利益1000億円、達成のハードルは極めて高い

 ・双日

 21年3月期が最終年度で750億円の最終利益目標

 21年3月期の400億円の最終利益予想を出し、定量目標未達を想定

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