大手銀行がビデオ会議システムを使い、資産運用や相続の相談を遠隔で受けられるサービスを強化している。対面主体の接客を見直し、新型コロナウイルスの感染防止に役立てる。感染症による生活様式の変化は、デジタル化が遅れていた銀行の営業手法にも変化を迫っている。新たな技術の活用で、利便性の向上との両立も目指す。
銀行の相談業務は顧客が来店したり銀行の担当者が訪問したりするのが一般的だが、感染への懸念から敬遠する声も多い。ビデオ会議では、利用者はスマートフォンなどのアプリを通じて担当者と画面越しに会話できる。複数の人が同時に接続できるため、離れて暮らす家族の相続相談などでも需要を見込む。
三井住友信託銀行は既に一部店舗にビデオ会議を導入した。担当者は「顧客の表情を見ながら、きめ細かい対応ができる」と話す。8月中にも全店舗に取り組みを広げる。
三菱UFJ銀行は住所変更など店頭で行う事務手続きの約7割を、アプリで代用できるよう対応を急ぐ。三井住友銀行とみずほ銀行も営業担当者にビデオ会議ができるスマホやタブレット端末を配備し、個人向け相談業務などに活用を始めた。
銀行側には超低金利の厳しい経営環境下でコストを下げる狙いもあり、全国地方銀行協会の大矢恭好会長(横浜銀行頭取)は「デジタル化の取り組みは不可欠だ」と強調する。ただ高齢者をはじめ、新技術を使いこなせない顧客へのサービスを維持することも求められ、銀行間で取り組みにばらつきが出そうだ。