金融

感染再拡大でGDP7~9月期プラス転換も小さめ 今後は産業構造転換も

 4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は戦後最悪の落ち込みとなり、新型コロナウイルスを押さえ込むため政府が発令した緊急事態宣言の打撃が改めて裏付けられた。足元では感染が再び増加傾向にあり、経済活動は抑制されそうだ。4~6月期に前期から低下したGDPの年率換算額41兆円のうち、プラス成長に転換を見込む7~9月期に挽回できるのは4割程度にとどまるとの指摘もある。低成長の時代に対応した産業構造の転換が必要になりそうだ。

 特に落ち込みが激しかったのは成長率同様に過去最悪を記録した個人消費だ。外出自粛や店舗への営業自粛要請のあおりで、“不要不急”の支出が激減した。5月に宣言が全面解除されたのに加え、国民に一律10万円を支給する特別定額給付金などの押し上げ効果も加わって6月には回復基調となったが、傷は深い。

 一方、政府は景気が4~6月期に底を打ったとみており、今後は経済対策の効果が下支えして「緩やかな持ち直しが続く」(経済官庁幹部)と期待する。民間エコノミストは7~9月期には10%超のプラス成長を見込む。

 ただ、金額ベースでは見え方が異なってくる。1~3月期に526兆円あった実質GDPは、4~6月期には485兆円と前期比41兆円下落した。大和総研の神田慶司シニアエコノミストの試算では、足元の感染拡大で消費が足踏みする影響などで、7~9月期には15兆円増の500兆円と回復が抑制されるとみる。

 コロナ禍では感染拡大を抑えるため人々の移動が制約され、“社会的距離”を確保するため店舗も席の間を空けるなど集客力が落ちる。同じ労働力や資本を投入しても生み出せる付加価値が落ちるため、10~12月期以降も回復の勢いは鈍化しそうだ。神田氏は実質GDPが消費税増税前の昨年7~9月期(539兆円)水準に戻るまで「3~4年はかかる」と予想する。

 低成長の時代を生き残るには、飛躍的な生産性の向上が欠かせない。西村康稔経済再生担当相は17日の記者会見で「『新たな日常』のもとで、ビジネスをぜひ作っていってほしい」と述べ、デジタル化を加速して業態転換を進めるよう訴えた。国を挙げ取り組んだインバウンド(訪日外国人客)需要が消失するなど、日本経済が置かれた現状は厳しく、コロナ禍を乗り越える新たな成長モデルを構築する必要に迫られている。(田辺裕晶)

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