働き方新時代 識者に聞く

「ジョブ型」雇用は日本の哲学とは違う 連合会長に聞く

 連合・神津里季生会長に聞く

 働き方が大きく変わろうとしている。現在の動きを働く側はどう見ているのか。連合の神津里季生会長に聞いた。

 --テレワークが一気に普及した

 「さまざまな職場で導入が進んでおり、必要に迫られればできるじゃないかという印象だ。通勤時間を節約できるので、それで仕事がはかどるならありがたいという側面もあるだろう。一方で、連合が6月に実施したテレワークに関するアンケートによると、半数超の人が労働時間が増えたと答えている。子供の世話など目に見えない負担を抱えながら仕事をしている人もいる。経営者にはそこのところをしっかりと見据えていただく必要がある」

 --労働時間が増えた理由は

 「例えば、職場なら上司に尋ねれば簡単に答えてもらえることも、パソコンを通じてだと、いちいち質問していいのか忖度(そんたく)してしまう。その積み重ねで時間がかかるといったようなことも考えられる」

 --今後、「ジョブ型」雇用が増えるといわれている

 「言葉だけが躍っている感がある。経団連の今年の『経営労働政策特別委員会報告』に『ジョブワーク』という言葉が出ているが、IT人材を外資系企業に厚遇でつまみ食いされるのに歯止めをかけたいというのが動機のようだ。それなら、そうした人材の処遇体系を労使で作ればいいだけの話だ」

 「全て仕事とひも付けて賃金を決めるアメリカ型の賃金制度のことを意味するなら、日本のように人材を育てながら経験を蓄積することで賃金が上がっていく制度とは哲学が違う。日本の企業社会において、アメリカ型の『ジョブ型』を導入したいと思っている経営者はあまりいないと思う」

 --ジョブ型に移行しないと世界に遅れるとの見方もある

 「日本の企業社会に不十分な点があるとの警鐘とも捉えている。上司が部下に対して、会社全体の目標と当該部署の使命を明確に伝え、それを実現するために、あなたは何をしてくださいときちんと説明できているかということだ。人を育てるという雇用スタイルは日本の雇用社会の強みであり、それが毀損(きそん)することがあってはならない」

 --同一労働同一賃金がスタートした

 「正確には『均等均衡待遇』だから、何を均等にして何を均衡にすべきかについて、普段から労使に共通理解がないと成り立たない。組合がない企業の経営者は、もし組合があれば、どう言われるのだろうかと考えておくべきだ」

 --これからの連合の役割は

 「私たちは“健全な労使関係”を旨としているが、その良さをもっとアピールしていかなければならない。最近は連合の中でも、中小企業の賃上げが大手企業を上回るのが当たり前になってきた。そうした労使関係の良い部分を世の中全体に波及させていけるように力を発揮していきたい」

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