講師のホンネ

感じ方は、人それぞれ 出来事で問われる自分の価値観

 世界中を巻き込んでいる新型コロナウイルス。「人によって、国によって、こんなにも対応の仕方や感じ方が違うとは」と驚いた方も多いと思う。5月初めのこと。各国が外出自粛やロックダウン(都市封鎖)をしていた頃にアメリカ人の知人、マギーさんと話をしていると、「ボーイフレンドとはもう3カ月会っていないの。こんな状況でもいろいろ出かけていく人で、私は彼から感染したくないから私の部屋には出禁にした。その方が安心」と言うのだ。その線引きの仕方に驚いた。(小林久美)

 これを仕事仲間と話していると話が発展し、ひとりが「安心安全とひとくくりに言うけれど、安全は仕組みや制度によって提供されるもの、でもそれで人が安心するかどうかには温度差がある」と指摘した。マギーさんの出禁安全策では、すぐに人恋しくなる私のような人間は安心を得ることはできないだろう。善しあしではなく、不安に感じるところが違うのだ。

 話をアメリカに戻すが、私はカリフォルニアで出産し娘が4歳近くになるまでアメリカの子育てを経験した。あちらは子育ての仕方も自分が良いと思うならオッケーの風潮、親が感じる「安心安全」への温度差に驚いたことが何度もあった。

 例えば、子供が生まれると夫婦の時間が格段に減ってしまうのは良くないという考えの下、「子供を親に2週間預けてパリ旅行を楽しんできた。歩き始めて大変になる前にね」というカップルがいた。いくら信頼できる親でも、生後6カ月の乳飲み子を置いて海外旅行に安心して出かけられるのかと、私は目をむいた。

 また別の例では、予防接種は全て危険なものとみなし「子供には一切受けさせない」というポリシーの親もいた。予防接種による副作用を心配してのことであったが、周りの親はその子が逆にいろいろな病気を教室に持ち込まないかと心配していた(そして私はそんなことになったら、どれほど周りに迷惑をかけることかと心配していた)。

 私たちは、疫病、大災害、人の生死など大きなことが起こる度に、それまでの価値観を問われ、わが身の安心も安全も考え直す機会を与えられる。そんな時、自分の感じ方、他人の感じ方は驚くほどにそれぞれなのだということを思いたい。

【プロフィル】小林久美

 こばやし・くみ プロフェッショナルコーチ。1965年、京都生まれ。15年に及ぶ米国生活の後帰国。ビズ・コミュニケーションズの人事部長として社員の意識改革に着手する中でコーチングに出合いプロコーチを目指す。現在は経営層のコーチのほか企業研修講師として活動中。国際コーチング連盟・プロフェッショナル認定コーチ。

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