世界的な特許情報サービス会社である仏Questel(クエステル、本社パリ)による買収が1月に発表された同サービス国内大手のサイバーパテント(東京都千代田区、旧NRIサイバーパテント)。発表以降、沈黙してきた高野誠司社長が初めて口を開いた。
--突然の買収劇に知財業界は驚いた
「クエステルの発表直前まで社員も知らなかった。国際出願増加など日本企業の海外進出に伴うグローバルな特許情報サービスを形成していくには海外企業と組むしかない。親会社で上場会社の野村総合研究所と相談。一部資本受け入れではなく完全買収(譲渡)であること、株主に説明できるような適切なプロセスを踏むことなどを条件に了承され、意中のクエステルが手を挙げてくれた」
--外資系企業となったが
「顧客である日本企業のため頑張ることに変わりはない。クエステルも日本市場は日本人に任せるとし、クエステル日本法人のコンシニ・ティエリ社長が取締役に加わっただけで3人の日本人役員は残った。課されたのはシナジーを生かし、日本市場の顧客をきっちり獲得、シェアを伸ばすことだ」
--日本企業のグローバル化に伴うサービス構築とは
「外国出願増加に伴い各国拠点でバラバラになった知財管理を日本にある知財本部などでグローバル管理できるサービスが最近は求められている。調査に必要となる海外各国の特許データをそろえることやサービスの利用画面を英語化して海外の拠点や研究所で広く利用できるようにすることも必要。従来もさまざま対応はしてきていた」
--クエステル傘下に入った強みとは
「世界最大の特許情報データサービス『Orbit』への顧客の期待は大きい。グループ各国拠点との連携で日本企業の海外拠点向けヘルプデスク対応が強化可能。現地業務時間帯に現地語で対応できる」
--これまでマスコミ対応をしなかったのは新型コロナウイルスの影響か
「違う。実はクエステルと協議し、わが社にクエステル日本法人を来年以降、統合することを検討していた。既に事務所を拡張してクエステル日本法人のリエゾンオフィスとし、各社のサービス部隊を集め、保有するサービスの推進体制の確立と整備へ向け、具体的検討をしてきた」
--今後、顧客への新たなアプローチが始まると
「まず9月15日から4日間、クエステルと共同で初のウェブセミナーを開く。両社の連携・サービス体制、日本企業のグローバル化へ向けた対応、経営統合など、説明したい」(知財情報&戦略システム 中岡浩)