政府は、電気自動車(EV)などに使われる「レアメタル(希少金属)」の備蓄体制を強化する。現状は国内消費量の60日分としている備蓄目標を、希少性の高い種類については半年以上に拡大する方針だ。
レアメタルは先端産業に欠かせないが、中国など特定国への依存度が高いという構造問題を抱えており、供給が途絶えるリスクへの備えを高める狙い。
レアメタルにはコバルトやリチウムなど34種類があり、日本はほぼ全量を輸入している。EVモーターの磁石などに必要なレアアース(希土類)は60%以上を中国に依存している。
備蓄目標は1986年に60日と設定し、その後変更してこなかった。レアメタルの重要性の高まりや特定国への寡占化など近年の状況変化を踏まえ、目標を見直す。
具体的な日数は産地の偏在性などを考慮して設定する。重要性が高い種類は半年以上、低いものは60日以下と弾力的に運用する方針だが、市場価格への影響を避けるため、個別の目標値は公表しない。
また一部のレアメタルは、産地がアフリカでも精錬工程を中国企業が押さえている例もある。このため石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による精錬所への出資や、日本企業が投資資金を金融機関から借り入れる際の債務保証も行えるようにする。
中国は2010年の沖縄県・尖閣諸島沖の漁船衝突事件後に日本へのレアメタル輸出を制限し、通商問題に発展した。日本企業はその後、調達先の多角化やレアメタル使用量を減らす技術開発を進めてきたが、種類によっては特定国に依存する状況が変わっていない。