経済インサイド

なぜ衣料品だけが…破綻ドミノ危機のアパレル業界、長年はびこる悪しき慣行 (2/2ページ)

 そうした傾向を追い風にしたのが、ユニクロやファストファッションと呼ばれるメーカーだ。製造から販売まで一気通貫で手掛けるビジネスモデルを展開。中国など人件費の安い国で製造し、中間コストをカットして収益力を高める一方、顧客の反応を商品企画に素早く反映させ、多くの消費者を取り込んでいった。

 さらに近年、第2の激震が業界を襲う。EC(電子商取引)の普及だ。安くて品質の良い商品が手軽にさらに入手しやすくなる一方で、メーカーの競争がさらに激化。リアル店舗の収益力が低下し、ファストファッションの経営すら脅かされるようになった。

 メーカーにとってより深刻なのは、業界には長年はびこってきた「作りすぎ」が一向に改善されていないことだ。

 市場が縮小しているにもかかわらず、多くのメーカーは商品を過剰に仕入れて販売し、売れ残りをセールで割り引く慣行を改めようとしなかった。そうした慣行が値引き拡大を招き、正価への不信や消費意欲の減退にもつながっている、との指摘は根強い。

 日本で販売される衣料品の実に半分は売れ残り、廃棄処分されているといわれる。コロナ禍による売れ残りの増加で、「内在していた供給過剰の矛盾が一気に現実化した」(ワールド)。

 三陽商会の大江氏も、悪しき慣行との決別を目指している一人。「秋冬の仕入れは徹底して絞った。欠品は覚悟の上だ」と改革への決意を強調する。

 コロナ禍が収束したとしても、どこまで客足が戻るのかは不透明。在宅勤務の定着などで軽装化が進み、衣料品への支出がさらに減るとの見方もある。いずれにせよ、メーカーの淘汰(とうた)が進むのは確実。ここ1、2年の間に悪循環を断ち切り、新たなビジネスモデルを確立できるかが明暗を分けそうだ。(井田通人)

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