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デジタル変革、新ビジネス活発 生き残りの鍵とは

 2010年代はかつて世界を席巻していた日本の電機メーカーが、「総合電機」の看板を下ろす総仕上げの期間だったといっていい。電機大手はコモディティー(汎用(はんよう)品)化した不採算事業の撤退を進め、それぞれの強みに焦点を当てた構造改革を断行。市場からも「ようやく自社の立ち位置を作れるようになった」(みずほ証券の中根康夫シニアアナリスト)と評価されるまでになった。

 11年3月期と20年3月期の大手8社の業績を見てみよう。合計売上高は10年前より9%減少したが、営業利益率は3.7%から6.2%に上昇している。電機業界は“筋肉質”になったことがうかがえる。

 一方で8社間の二極化も進んだ。日立製作所やソニーは復活を果たしたが、パナソニックは車載事業が伸び悩み、業績が低迷。東芝は不正会計問題で事業規模が縮小し、経営危機に陥ったシャープは台湾の鴻海精密工業の傘下に入った。明暗を分けたのは技術の進化や社会の変化への対応力、改革スピードの差だ。

 電機大手にとって、20年代は本来、構造改革を経て飛躍の時期になるはずだった。だが、新型コロナウイルスという新たな危機に直面、業績への影響が懸念されている。

 ただ、コロナの感染拡大はテレワークが広がるきっかけとなり、電機業界にとって大きな商機につながる可能性もある。既にデジタルで働き方や企業を変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を推進し、新たなビジネスを創出する動きが活発化している。

 今後の電機業界について、早稲田大の長内厚教授は「日本は技術的に劣っていない。どう売るかという発想が欠けていたため、韓国や中国、台湾メーカーに取って代わられた。過去の失敗を生かした戦略を立てられるかが生き残りの鍵になる」と指摘する。

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