高論卓説

“未曾有の落ち込み”でも何とか保たれたが… 真剣に考えるべき消費税減税

 企業はコスト削減へ景況感年末に急悪化

 内閣府が17日に発表した2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値は、1~3月期と比べて7.8%減、年率換算すると27.8%のマイナスになった。リーマンショック直後の09年1~3月期のマイナス17.8%を上回り、戦後最大の落ち込みである。予想されていたとはいえ、衝撃的なマイナス成長だ。

 原因はもちろん、新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)を防ぐために緊急事態宣言を出し、営業の自粛を求めて経済活動を止めたためだ。その影響がはっきりと数字に現れた。

 この未曾有の落ち込みに比べて、人々の生活は何とか保たれている。もちろん、パートを雇い止めになったり、失業したりした人もいるが、その影響は最小限に抑えられているようにみえる。経済対策の決定までに右往左往を繰り返したり、時間を要するなど「後手に回っている」という国民の批判は強い。だが、一人10万円の定額給付金にせよ、経営を維持するための持続化給付金にせよ、この数カ月の間の資金繰り破綻を回避する役に立ったことは間違いない。

 総務省の家計調査を見ても、消費支出が大きく減少している一方で、5月の勤労者世帯の実収入は9.8%増、6月は15.7%増とかつてない増加を示した。定額給付金などが収入増に結びつき、とりあえずの手元資金が増えて一息ついている人も少なくないとみられる。

 だが、問題はこれからだ。

 次の7~9月期のGDPは大きなプラスになるのは確実だ。4~6月期と比べるので、「どん底」から少しでも浮上すれば、「プラス成長」になる。実際は1年前などと比べれば大きなマイナスが続くので、人々の景気実感とはかけ離れたものになる。

 一種の数字のマジックなのだが、政府が「プラス成長」という数字だけをみて、「経済は回復過程にある」と感じ、対策の手を緩めてしまうリスクがある。7~9月期のGDPが発表される11月中旬になると、3月期決算企業の中間決算が出そろい、年度の業績見通しも固まる。そこで、赤字が不可避となった企業はコスト圧縮に走ることになるだろう。年末のボーナスが減ったり、雇用に不安を覚えたりする人が増えれば、景況感は一気に悪化。消費は再び大幅な減少に向かうことになりかねない。

 そうした消費の底割れを防ぐには、政府の経済対策が不可欠になる。ところがGDPの数字で政治家や官僚が気を緩めれば、対策がまたしても後手後手に回ることになりかねない。

 特に年末年始の消費を上向かせるための施策が不可欠だ。消費底割れを防ぐには、思い切った消費喚起策が不可欠だ。ドイツは消費税率の引き下げや電気料金の引き下げなどを既に実施しているが、これは国民の生活を守るためだと位置付けている。

 日本も年末商戦が始まる12月から来年3月まで、消費税をゼロ%にするなど、消費税減税を真剣に考えるべきだ。また、キャッシュレス決済の政策効果を検証し、消費の下支えに役立ったということならば、再度、ポイント還元を実施することを考えたらいい。

 他にも、在宅勤務で急増している宅配便などの家計負担を減らすために、宅配料金の値下げを実施したり、宅配業者の新規雇用者の人件費を政府が負担したりするなど工夫次第で、「新しい生活」を下支えし、消費の底割れを防ぐことができるはずだ。くれぐれも破綻に瀕(ひん)した弱者を救済する対症療法的政策と混同せず、コロナ後を見据えた構造改革を推進し、消費の底割れを防ぐ政策を早急に打ち出し、実施すべきだろう。

【プロフィル】磯山友幸

 いそやま・ともゆき ジャーナリスト。早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務め2011年に独立。

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