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「甲子園のジェット風船禁止」でミズノの買収“空振り” 相乗効果には期待 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの感染拡大でスポーツイベントが中止や規模縮小を余儀なくされるなか、会場で観戦グッズを売る企業もそのあおりを受けている。プロ野球阪神タイガースの本拠地・甲子園球場(兵庫県西宮市)の名物「ジェット風船」などを製造・販売するシャープ産業(神戸市)もその一つだ。スポーツ用品大手のミズノが観戦ビジネスに手を広げようと今年5月に買収したが、コロナ禍で当てが大きく外れてしまった格好だ。(田村慶子)

 衛生上の問題で消滅も

 「グッズを売るためには、会場に観客が入らないとどうにもならない」

 こう声を落とすのは、甲子園球場などで観戦グッズを販売するシャープ産業の社員。甲子園球場の休業にともない、4月から全社が臨時休業となった。6月にようやく営業再開にこぎつけたが、イベント頼みの事業をどう盛り返すか頭を悩ます日々だ。

 同社の看板商品が甲子園球場で「ラッキーセブン」となる7回裏の攻撃前に観客席から放たれる「ジェット風船」。応援歌とともに一斉に飛ばされる風船で球場がカラフルに染まる。ファンの一体感を生み出すための重要なアイテムだ。

 ところが、観客自身が風船に口をつけて息を吐き出してふくらませてから飛ばすため、コロナの感染のリスクが高いと禁止になった。過去にも衛生上の問題を指摘する声があり、コロナと共生する新生活様式においては商品そのものが消える懸念さえある。

 代わりに売り出したジェット風船柄のタオル(550円)は「オンラインショップでよく売れている」というが、今年度の業績見通しについては「一切答えられない」と口をつぐむ。

 “無観客”の交流試合

 甲子園球場では6月にプロ野球の今シーズンが開幕したものの、当初は無観客で実施。7月10日から観客を入れ始めたが、約4万7500人の収容人数に対し、政府のイベント開催方針に基づいて5千人が上限とされた。東京や大阪などでは感染の波が再び押し寄せており、入場制限がいつ緩和されるかも不透明な状況になっている。

 追い打ちをかけるように夏の全国高校野球選手権大会が中止に。シャープ産業は例年、夏の甲子園大会の記念グッズ製作も手がけている。甲子園球場では8月10日から今春の選抜高校野球大会の代表32校による交流試合が開かれたが、スタンドでの応援を部員や教職員、選手の家族らにしぼった実質は無観客試合だった。

 シャープ産業は交流試合の記念グッズも売り出したとはいえ、ほぼ無観客で期間も計6日間と短いため、例年のようなグッズの売れ行きは到底望めない。

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