コモテック、新規事業創出急ぐ
バスやトラックといった大型車両、さらに建設機械や特殊車両は、ほとんどがディーゼルエンジンで動く。起動時に黒煙が排出され、過去には環境問題となった。このディーゼルエンジンの黒煙をゼロにしようと奮戦してきたのが、埼玉県春日部市の地場メーカー、コモテックだ。長年、黒煙除去装置(DPF)の開発や製造を手掛けているが、電動化の波があらゆる分野に押し寄せており、DPFを使わなく済む時代が迫る。同社は戦略子会社を立ち上げるなど新規事業の創出を急ぐ。
「モコビー」との商品名が付いたカセット式DPFは、ディーゼルエンジンから排出される黒煙の99.9%、微小粒子状物質のPM2.5も90%以上除去できる。除去性能では世界トップクラスだ。
炭化ケイ素製セラミックを使ったフィルターはシンプルな構造のため、目詰まりの心配がない。廃車車両から取り外してリサイクルもできるといった、使い勝手の良さも評価され、国内だけではなく、海外からも数多くの引き合いがある。
モンゴルの首都、ウランバートルでの路線バス黒煙低減事業が、国際協力機構(JICA)の普及・実証事業に採択された際、同社のDPFが採用された。2017年11月~19年9月、路線バス24台にDPFを搭載。高い黒煙除去効果が認められ、モンゴル政府は国営航空会社の特装車にもコモテックのDPFを取り付ける方針を決めた。
だが、新型コロナウイルスの流行に直面し、これに限らず、台湾やタイなどでも進んでいた商談が相次ぎストップ。一部、海外からの調達が必要だった原材料も入ってこなくなり、開発や製造も縮小せざるを得ない状況に追い込まれた。4月の政府の緊急事態宣言では、同社は従業員を2班に分け、製造現場は最小限の人数に絞ることにした。
そして、在宅勤務に切り替えた従業員を中心に製品のカタログやDPFの設置事例集の作り直しに着手した。製造現場の仕事のない日には、ものづくりに欠かせない図面の再確認を従業員同士で行った。小森正憲社長は「仕事がなかったのはつらいけど、今思えば、ものづくりを進める上で必要なことに目を向けられた貴重な時間だった」と振り返る。
自動車に限らず、建設機械も電動化し始めており、数十年先にはDPFが使われなくなることも予想される。それを見越し、19年4月、ものづくりの製造受託を手掛ける子会社「コモラボ」を立ち上げた。電子制御や機械などに精通した従業員を抱えており、さまざまなビジネスの課題をものづくりで解決していく。小森社長は「ものづくりの上流部分から関わっていくことで、新たな仕事を増やしていきたい」と意欲を見せる。(松村信仁)
【会社概要】コモテック
▽社長=小森正憲氏
▽本社=埼玉県春日部市南栄町13-17
▽設立=1996年12月
▽資本金=1000万円
▽年商=約8000万円(2020年9月期見込み)
▽従業員数=7人
▽主な事業=黒煙除去装置の開発製造など
▽ミッション=ディーゼルエンジンの排ガス低減技術で、なくてはならない企業になる