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女性が「あつ森」人気継続を牽引 巣ごもり追い風、スイッチ本体も押し上げ

 任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」向けソフト「あつまれ どうぶつの森」の人気が発売から5カ月たった今も衰えない。ゲーム情報誌「ファミ通」によると、国内では家庭用ソフトの売上本数で7月まで連続首位を記録。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり需要」が追い風となった。普段ゲームをしない女性の心もつかみ、スイッチ本体の販売も押し上げた。

 友人とゲームで再会

 「島の広場めっちゃ密じゃん」。8月上旬、東京都中野区の桑迫静香さん(29)はスイッチの通信機能を使って仲間4人をゲーム上にある自分の「島」に招いた。この日はソフトのデータ更新で追加された花火大会が開かれ、浴衣で着飾った「どうぶつ」でにぎわった。

 「あつ森」の愛称で親しまれる同作はプレーヤーが無人島に移住し、個性豊かなどうぶつたちや他のプレーヤーとの交流を楽しむゲームだ。昆虫や魚を採集したり、自分の家を建ててインテリアを作り込んだりとそれぞれ自由な時間を過ごすことができる。

 コロナ禍でなかなか会えなかった友人とゲームの中で再会できた桑迫さんは「遠くにいる友人と夏らしいイベントが楽しめた。学生に戻った気分」と満足げだった。

 任天堂によると、3月20日の発売から全世界の累計販売本数は6月末時点で2240万本。スイッチ専用の任天堂ソフトでは、2017年発売の「マリオカート8 デラックス」に次いで売れている。20~30代の利用比率が高く、5月時点で4割以上が女性だった。

 立命館大の中村彰憲教授(コンテンツ産業論)は「ほのぼのとした世界観で操作が難しくない。女性や子供が遊びやすい内容で、プレーヤー層が一気に広がった」と解説する。

 女性人気の高さに目を付けたのが国内外のアパレル企業だ。あつ森では「マイデザイン」と呼ばれる機能があり、キャラクターが着る服や自宅の壁紙、じゅうたんなどの図柄を自作してインターネット上で配布できる。「ヴァレンティノ」や「アナスイ」といった海外ブランドも服や小物のデザインを公開し、会員制交流サイト(SNS)で話題となった。

 配布は無償のため直接的な収益にはつながらないがPRに一役買っている。8月に浴衣ブランド「ふりふ」の新作10種類を公開した三松(東京)の担当者は「オンラインショップのアクセス数が公開後1.5~2倍に増えた。知名度向上につながった」と話す。

 4~6月期で最高益

 任天堂の20年4~6月期連結決算は、あつ森効果で本業のもうけを示す営業利益が前年同期の約5.3倍に当たる1447億円で、4~6月期として過去最高だった。スイッチ本体の販売台数も約2.7倍に増えた。

 こうしたブームは「年末商戦需要の先食い」(アナリスト)との指摘がある一方、スイッチユーザー層の広がりでソフト販売の増加が見込める。中村教授は「新たな本体の投入がなくても、これまで通り家族で楽しめるソフトを充実させていけば、あつ森で広がったプレーヤー層をつなぎ留めることができるだろう」とみている。

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