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トヨタ水素バスとホンダバッテリーがタッグ 災害時に「動く発電所」

 トヨタ自動車とホンダは31日、災害時などの電力対策で、水素で発電するトヨタの燃料電池バスと、ホンダの外部給電装置(バッテリー)を組み合わせた、移動式の大規模発電・給電システムを構築したと発表した。静かで二酸化炭素を出さないクリーンな“動く発電所”の電気を大中小のバッテリーに小分けし、バケツリレー式に避難所や家庭に配布できる。ライバルの両社だが「電動車活用やクリーンなエネルギー供給の分野では強みを持ち寄って“共創”する」としており、業界内の電力戦略に一石を投じることになる。

 システムは「Moving e(ムービングイー)」と命名。共通のデザインやロゴを両社で使う。実際のニーズを探るため自治体や企業といった実証実験相手を探す。

 バスは、トヨタの77人乗りの大型燃料電池バスをベースに高圧水素タンクの数を倍増し、外部出力する給電口も2口設置。ここから、まずは9千ボルトアンペア(100ボルトなら90アンペア分)の出力がある、ホンダの可搬型の大型外部給電器で電気を取り出す。さらに1500ワットや500ワットといった中小型のバッテリーでリレーすることで、停電した被災家屋や避難所に世帯レベルで電気が配れる。

 給電量は最大約490キロワット時。往復で計200キロ走行した上で1度に50人規模の避難所が3日間持つ電力量という。水素ステーションへ往復して燃料を補給することで、さらに長く継続して発電・給電が可能だ。バスはバッテリーを積んだ上に27人乗れる仕様で、ベッドで仮眠などもできる。

 新型コロナウイルス禍で現在は難しいが大規模イベントなど平時も活用可能。両社とも有名アーティストのコンサートでの給電実績があるほか、燃料電池の技術研究団体で交流があり、協業につながったという。

 トヨタの浜村芳彦FC事業領域統括部長は「大型バスと電力を組み合わせれば新しい価値が生み出せる」、本田技術研究所の岩田和之エグゼクティブチーフエンジニアは「災害時に送電網を代替する役割を果たしたい」と語った。

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