働き方新時代 識者に聞く

経営者は旗を振れ 働き方改革、何をどう見直す?

 日本働き方会議代表理事・石橋博史氏に聞く

 働き方改革の必要性は認識しながらも、進め方については手探りの企業も多い。何をどう見直せばいいのか、日本働き方会議の石橋博史代表理事に聞いた。

 --今なぜ働き方改革なのか

 「加工貿易を主体に経済発展をしてきたかつての日本は生産性を上げやすかった。日本人は答えがあるものを覚え、改善していくことが得意だからだ。ところがエレクトロニクス技術、デジタル技術の台頭により、ものすごいスピードで技術革新が進むようになると、米国や中国についていけなくなった。答えのない世界の中で、先を見る力が欠けているからだ。だからここで一度、今やっている仕事を見直さなければいけない。コロナ禍によるテレワークの普及もあり、絶好の機会になる」

 --仕事をどう見直すのか

 「自分のやっていることにどの程度の価値があるのかを定量化することだ。一つのアウトプット(産出物、成果)に費やした時間とコストを明確にするには、まず業務を『見える化』する必要がある。業務を可視化できれば、自動化することも可能だ。例えば、出張旅費を清算するのに、領収書を添えて部長、課長の印鑑を順番にもらって経理に書類を回すなんて煩わしいことはなくなる。旅費が発生した時点でスマホやタブレットに入力すれば、自動的に会社の貸借対照表なり損益計算書にまで反映させられるような仕組みを構築できるからだ」

 --業務を可視化する方法は

 「どこの企業でも社員一人一人の業務というのは、だいたい100ぐらいしかない。そこまで分類していけば個々人の仕事の内容が見えるようになり、体系的に整理整頓できる。その次にアウトプットから見ていく。すると、一つの帳票を作るのに多数の社員の手を経ていたということが分かってくる。手続きに本社を経由させる会社ほど無駄が多い」

 --業務の自動化が進むと、働き場所を失う人も出るのでは

 「繰り返しの多い業務はAI(人工知能)などに置き換えられる。しかし、右か左かと判断を迫られるような場面で、思考し、決断するという業務は残る。また、自動化すればするほど、データをどう活用すべきか考えるといった仕事は増えていくだろう。これからの仕事は“ジョブ”と呼ぶアメリカ型の専門性の強いものになるだろう。働く人は企業を選ぶのではなく、仕事を選び、自分の専門性を磨いてキャリアアップしていくことを目指すべきだ」

 --日本働き方会議代表理事として、最も意識することは

 「経営トップに改革の旗を振ってくださいと口を酸っぱくして強調していく。私どもの手法は現場一人一人の業務を可視化するところから始まるので、トップによっては『そんな細かいことは現場に任せる』などと関心を示さない人がいる。親会社から天下ってきた社長で、『退任するまでの2年間、波風を立てないでくれ』なんて言う人さえいた。それでは改革は不可能だ」

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