動き出した働き方改革

橋下徹氏×高橋恭介氏(2-2)「大事なのは緊張感を与えること」 (1/2ページ)

 契約型の社会構築が必要

 橋下 おっしゃる通りです。日本の場合、自分はどんな仕事で対価をもらうのかわからないままずっとやってきた。雇用主には絶対服従でお給料をもらう以上、なんでもこなさなければならない。対価をもらう仕事、成果というものに頭がいかない、いわばご主人さまに隷属する丁稚(でっち)奉公のようなものですね。

 3割ならジョブ型移行も可能

 高橋 日本の企業を取り巻く環境を見ると、ジョブ型ゼロ、メンバーシップ型100%というのが現状でしょう。もともと日本人そのものが農耕民族でメンバーシップ型が得意なんですよ。ただ、こうした時代が到来した以上、もはやゼロか100かの議論では済まない。ただ、メンバーシップ型が企業組織に根付いている以上、いまは3割程度をジョブ型に移行するくらいが一番心地いいのではないかと思います。

 橋下 西欧の場合は市民革命があり、そうした歴史の流れのなかで契約社会を形作ってきた。一方、日本は純粋な市民革命を経験していません。ゆえに日本では完全な契約型に移すことはできないだろうし、そうする必要もありません。ただ、現在の丁稚奉公的な雇用を脱し、契約型に近づけていく努力は必要でしょう。

 高橋 コロナ禍で米国では解雇が増えて失業率が高まり、改めて日本的雇用が正しかったという議論も出ています。確かに解雇が普通にできるような社会は誰も望んでいません。その点から見てもアメリカのようなジョブ型への移行は不可能だと思います。

 橋下 政府の未来投資会議などの働き方改革議論を見ていると、とにかく100%ジョブ型にすべきようなメッセージに聞こえてしまう。これは、極端すぎると思います。政府は早急に結果を求めたいのでしょうが、これでは経営者は及び腰になってしまう。高橋さんが言われる通り、3割ジョブ型なら、実行することは十分に可能だと思いますね。

 鶴田 日本の場合、経営者が一歩踏み出すとなれば、どうしても組合や先輩の顔が浮かぶ。米国と異なりレイオフが不可能な企業社会が前提としてあるだけに、どうしても神経質になりがち。そんなナーバスな面を考慮すると、仮に30%であっても結構、高いハードルになるのではないでしょうか。

 橋下 僕は雇用を流動化させるために解雇規制を緩やかにすべきだと言い続けてきました。規制が厳しければ雇用は守られるのでいいことだと思われますが、従業員が動かない状況こそが丁稚奉公制の一番の柱なんです。従業員に逃げられる怖さがなければ、雇用主は雇用環境を改善しようとは思わないですよ。逆に流動性が高まれば従業員に逃げられないように雇用主は雇用条件を良くしなければならない。大事なのは、雇用主つまり経営者に、従業員に逃げられる怖さ、緊張感を与えることです。

 国家公務員も人事評価を変更

 高橋 実は、現在、20代の若者の離職率が一番高い。年功型賃金なので同じ会社で一生働く前提なら給料は安くなる。ところが、例えば外資系IT企業などでは新卒でも、相応の能力さえあれば数千万円の年収が得られるところもある。年収だけでなく、やりがいもあるでしょうが、当然、日本企業に入るメリットを感じない優秀な20代も出てくるわけです。

 橋下 知事時代、人事制度を大きく変えました。従来は絶対評価だったので本人が「頑張っている」と言えば5段階で上から3番目の区分までに99%が入ってしまう。そこで相対評価を導入した。そもそも公務員の世界には市場競争が及ばないので、人事制度において無理やり、競争し切磋琢磨(せっさたくま)させる制度を導入しました。

 鶴田 組織の緊張感も変わるでしょうね。

 橋下 大きく変わりました。相対評価をしようと思えば、仕事の成果に着目した人事評価をしなければならなくなります。ある意味、公務員の世界に職務の見える化、ジョブ型を一部導入したはしりでした。

 高橋 健全に格差をつけるという試みは、これからの時代、絶対に必要と思います。国家公務員の評価制度も来年変更され、能力や実績を反映する仕組みになりますね。

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