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アクセス急行/GAS JAPAN 五輪延期で貸し切りバス業況一転

 ▼アクセス急行 アクセス急行は8月7日、千葉地裁佐倉支部から破産開始の決定を受けた。

 同社はメルセデス・ベンツの高級観光バスによる訪日観光客を対象とした貸し切りバス事業を展開していた。

 近年はインバウンド需要の拡大に合わせてバスの増車を進め、さらに、東京オリンピック・パラリンピックで米国バスケットボールチームの送迎予約を確保するなど順調な受注環境にあった。

 しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によってインバウンド需要が消失。2020年の五輪・パラリンピックの開催も21年に延期することが決まったことで、関連の送迎予約がキャンセルとなるなど業況は一転した。

 売り上げの大幅な減少により資金繰りが逼迫(ひっぱく)するなか、今後の業績回復の見通しが立たず、運転資金の調達も限界に達したことで、今回の措置となった。

 ▼GAS JAPAN GAS JAPANは8月11日、東京地裁から特別清算開始決定を受けた。

 同社はイタリアの「GROTTO S.p.A.」(GROTTO社)の日本法人で、カジュアルファッションブランド「GAS(ガス)」の販売を手掛けていた。

 メイン商品のジーンズのほか、Tシャツやパンツ、ニット、ワンピースなどのメンズ・レディス向けカジュアルウェアや服飾雑貨を幅広く取り扱っていた。

 東京や大阪、名古屋などの百貨店や商業施設に店舗を展開し、さらに自社ECサイトでも販売。2007年12月期には売上高約12億円を上げていた。

 しかし、近年は消費の低迷などから販売不振に陥っていた。そのため、GROTTO社が日本市場からの撤退を決定。GAS JAPANは20年4月30日に株主総会の決議で解散していた。

【会社概要】アクセス急行

 ▽本社=千葉県佐倉市

 ▽設立=1984年4月

 ▽資本金=500万円

 ▽負債額=精査中

【会社概要】GAS JAPAN

 ▽本社=東京都渋谷区

 ▽設立=2006年1月

 ▽資本金=1億円

 ▽負債額=約20億円

 〈チェックポイント〉 アクセス急行はインバウンドの消失に加え、東京五輪関連の受注もキャンセルとなった。ビッグイベントが喚起する多くの副次的なビジネス需要に期待を寄せる企業は多い。それだけに五輪延期による混乱は想像に難くない。コロナ禍に伴う経営悪化とともに、五輪延期で被る企業への影響も注視する必要がある。

 GAS JAPANのラインアップはカジュアル路線だが、デザインや品質の高い高価格帯だった。撤退は親会社の方針であらがえない側面があるとはいえ、低価格化が進むアパレル業界で厳しい販売競争にさらされた。国内外のブランドが乱立する日本市場で、独自性を見い出す難しさをあらためて示す事例となった。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)

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