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デジカメ各社正念場 高機能化、動画撮影の充実で存続図る

 世界でも数少ない日本メーカーがトップシェアを誇るデジタルカメラ業界が、新型コロナウイルスの影響で窮地に立たされている。カメラ付きのスマートフォンの普及で安価なコンパクトデジカメが淘汰(とうた)される中、新型コロナ感染拡大に伴う外出自粛で撮影機会が奪われ、根強いファンの多い一眼カメラなど高級機の需要まで減少しているのだ。各社はユーザーのつなぎ止めを狙い、高機能化や動画撮影の充実で生き残りを図っている。

 「ルミックス」ブランドを展開するパナソニックは3日、高精細の撮影が可能な「フルサイズ」と呼ばれる大型画像センサーを搭載したミラーレス一眼カメラの新製品「DC-S5」を今月25日に発売すると発表した。従来機よりも小型・軽量化した上に、オートフォーカス機能も強化。高画質の4K動画撮影にも対応している。

 オンライン説明会でマーケティング責任者の伏塚浩明氏は「写真だけでなく動画でも表現するクリエイターをターゲットに販売戦略を立てている」と説明。インターネットの交流サイト(SNS)の拡大で動画制作の市場は急速に成長しており、新製品を積極的に売り込む方針だという。

 他のメーカーも、フルサイズの新型ミラーレス一眼カメラを投入。キヤノンが7月に発売した「EOS R5」はミラーレスとして世界で初めて8K動画を撮影できるほか、1秒間に20コマの高速連写も可能にした。

 ミラーレスでシェア首位のソニーは10月に「α7S III」を発売し、ソニーのデジカメで初めて4K動画撮影に対応する。8月に発売のニコン「Z5」も4K動画が撮れる。富士フイルムは中型の画像センサーを搭載した4月発売の高級機「X-T4」に、動画で“自撮り”がしやすいように液晶モニターを回転できる機能を付けた。

 各社が高画質や動画機能に力を入れるのは、市場が急速に縮小する中で、ターゲットを愛好家のようなコアユーザーに絞り込まざるを得ないという事情がある。

 カメラ映像機器工業会によると、デジカメの世界出荷台数は2010年にピークの1億2146万台を記録した後、19年には1521万台と大幅に減少した。今年は東京五輪の“特需”も期待されていたが、逆に新型コロナの影響で需要が急減し、「とどめを刺された」(業界関係者)との見方も広がる。

 そうした中、老舗メーカーのオリンパスは6月にデジカメなど映像事業を分社化し、事業再編ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)に売却すると発表した。各社とも生存競争に敗れれば、業界再編も含む構造改革の波に飲み込まれかねない状況だ。(桑原雄尚)

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