フリーマーケットアプリ大手のメルカリで赤字続きの米国事業に光明が見えてきた。新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要を追い風に、アプリ上での売買高を示す「流通総額」が4~6月期に黒字化の目安とする月間1億ドル(約106億円)を突破したからだ。グローバル企業への脱皮には米市場での成功が欠かせないが、競争は厳しさを増しており、正念場が続く。
「ブレークスルー(突破口)になった」。米国メルカリのジョン・ラーゲリン最高経営責任者(CEO)は4日の記者説明会で米市場での手応えを語った。
4~6月期の米国事業での流通総額は前年同期比2・8倍の2億8400万ドルで、1カ月単位では1億ドルを上回る月もあった。広告宣伝への投資でメルカリの認知度が1・8倍に高まり、即日配送などのサービス改良施策が立ち上がるタイミングにコロナ禍が重なって、利用者や利用回数が一気に拡大した形だ。広告費用などの負担がかさんではいるが、単月での黒字も視野に入ってきた。
メルカリは国内フリマアプリ、米フリマアプリ、スマートフォン決済という3本柱の事業構造だ。国内フリマアプリは好調だが、米国事業とスマホ決済への先行投資がかさみ、令和2年6月期の最終損益は227億円の赤字だった。創業翌年の平成26年に始めた米国事業も赤字続きで、業績の重しとなっている。
それでも米国事業を成長分野と位置付け、こだわり続けてきた。米国での成功がグローバルブランドとしての認知につながり、世界展開を進める上で影響が大きいとみるからだ。山田進太郎社長は8月の決算会見で「収益化の道筋が見えたため事業継続を決断した」と安堵(あんど)の表情を見せた。
メルカリは米国事業で令和3年6月期に月間流通総額を前年比5割以上成長させる目標を掲げる。もともと米国は対面販売での中古品のやり取りが活発だが、コロナ禍でネット取引が注目され、成長の余地が拡大している。
だが、フリマアプリの分野では大手のオファーアップやイーベイなどがひしめき合い「競争環境はかなり厳しい」(ラーゲリン氏)。アプリの使いやすさなどサービスでの差別化や広告宣伝による知名度の向上は不可欠だ。こうした投資を緩めれば、流通総額の伸びが鈍化する可能性もあり、収益性と成長のはざまで難しいかじ取りが続く見通しだ。(万福博之)