ビジネスアイコラム

露極東経済イベントに冷めた目 魅力乏しく新政権機に退く日本企業

 例年9月に露極東ウラジオストクで開催され、安倍晋三首相も2016年以降参加を続けてきた「東方経済フォーラム」が、今年は新型コロナウイルスの影響で中止された。外資の導入による極東振興を狙うプーチン露大統領の肝いりで15年から毎年行われてきた同イベントだが、そもそも、巨額の投資に似合う成果が得られていなかったとの批判が露国内で出ていた。ロシアでビジネスを手掛ける日本企業の間でも「会社の幹部を連れてくるだけのメリットがない」などとして、関与を縮小させる動きが出ているという。

 「フォーラムで発表されている経済合意の一部は実行されていない。新型コロナの影響、欧米による経済制裁、また割に合わないとして、投資家が“危険な計画”を避けた事例もあったという」。露地方政治・経済成長センターのグラシェンコフ代表は記者の書面インタビューで、フォーラムの現状をそう指摘した。

 東方経済フォーラムは、人口減少と経済の衰退が続くロシア極東の振興策として、プーチン氏が15年5月に大統領令で実施を決めた同国最大級の経済イベントだ。プーチン氏は第1回会合で、「ビジネスのために最高の環境を整える」と豪語。以後、日本や中国、韓国、その他アジアの首脳らが毎年出席し、それに随行して企業関係者による大規模な投資ミッションが現地を訪れるのが通例となっていた。

 ただ、域内人口がわずか600万人規模とされる極東地域でビジネスを展開することは、エネルギーや水産業など1次産業を除けば、至難の業だ。主催者は「270件、3.4兆ルーブル規模の合意がなされた」「国内外から1200人超のメディア関係者が参加した」などと成果を強調するが、グラシェンコフ氏は「主要な経済合意は全て東方経済フォーラムより前になされているもので、フォーラムはそれを追認する場にすぎない」と断じる。

 さらにフォーラム開催に、巨額の予算が費やされている実態などにも批判の声が上がる。

 露極東の通信社、デイタ・ルーは6月、フォーラムが膨大な支出で成り立っている一方で、開催手法は時代遅れで、参加する外国人のレベルも年々低下しているなどと指摘した。報道によれば、昨年のフォーラムでは、使い捨ての展示物に数千万ルーブルが費やされていた実態が明るみに出て、「極東地方の住民に衝撃を与えた」という。

 露政府の巨額投資にもかかわらず、極東の経済成長は順調とは言い難い。フォーラムの開催地であるウラジオストクは堅調とされるが、周辺地域では停滞が目立つという。ハバロフスクでは知事の拘束を発端に、7月11日から長期の反政権デモが発生したが、露極東連邦大学のアルチョム・ルキン准教授は「ハバロフスク地方の住民が、経済の停滞にも強い不満を抱いていることは疑いようがない」と指摘する。

 極東の現状は、安倍首相と同行する形でフォーラムに参加してきた日本企業にも影響を及ぼしている。

 ある関係者は「ホテルや交通手段が脆弱(ぜいじゃく)なウラジオストクでのフォーラムの参加には相当額の費用がかかる。現地の政権幹部との会合アレンジなどに失敗すれば、担当者の評価も下がるため、年々参加規模が縮小する傾向にある」と明かす。

 ロシアとの関係強化に注力した安倍政権が終わるのを受け、日本が今後、どのような形でフォーラムに関与するかも注目される。

 焦点の北方領土問題をめぐっては、日本政府が8項目の対露経済協力などを打ち出すなど二国間関係の改善に尽力したものの、進展しなかったのが実情だ。そのため日本政府が今後、フォーラム参加を含めて従来通りに露極東の経済プロジェクトに関与し続けるかには疑問が残る。

 ルキン氏は「日本企業の極東への関心が薄まっている事実は明らかだ」とし、「来年、日本の首相がフォーラムに参加することはないだろう」と予測する。(産経新聞大阪経済部 黒川信雄)

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