サントリー「ザ・プレミアム・モルツ ダイヤモンドの恵み」限定発売
世界的な酒類メーカーであるサントリーグループが、強豪がひしめくビール市場で存在感を高めている。ただ、日本の酒類市場は人口減少や若年層の飲酒離れもあり、先行きの不透明感は強い。酒類市場の75%を占めるビール類も全体としては減少傾向が続く。詳細にみるとプレミアムビールは堅調に推移するなどの糸口もみえるが、市場の活性化には及ばない。こうした状況下で、サントリービールでは“こだわり”を盛り込んだ特別な“世界観”を商品とともに発信、市場を刺激する。9月8日に数量限定で発売した「ザ・プレミアム・モルツ ダイヤモンドの恵み」の開発チームに、“知”を結集して挑んだ最先端のビール造りを聞く。
■海老原司さん 新たな価値を提案
▽えびはら・つかさ マーケティング部プレミアム戦略部
■伊藤惠士さん 多様化ニーズ対応
▽いとう・さとし デザイン部デザインディレクター
■林智恵さん “家飲み”を後押し
▽はやし・ちえ 商品開発研究部 若手醸造家
--今回の新製品を開発するにあたっての開発チームのミッションやメンバーの役割を教えてください
海老原 私たち開発チームの大きなミッションは、ビール市場において、商品を通じて新たな価値を提案し、お客さまにもっと魅力的に感じていただくにはどうすべきなのかを考え実行することでした。私はこのチームで主にマーケティングの面からの商品企画を担当したのですが、検討を進めるなかで着目したのは、今年の10月1日に施行される酒税の税率改正です。1リットルあたりビールは20円の減税、新ジャンルは28円の増税となります。このため、新ジャンルについては、増税前の9月に買いだめが起きると想定されていますが、一方のビールは減税後の10月以降に購入意欲が高まり、そこにチャンスがあるのではないか、と考えました。このようなさまざまな動向を踏まえ、ビールカテゴリーに先手を打つために9月8日に“特別なビール”の限定品を発売することにしました。開発チームができたのは昨年9月。1年がかりの商品化でした。
伊藤 私は商品パッケージのデザインなどを中心に担当しました。サントリーでは、伝統的にデザイン担当が商品開発の初期の段階から参画することが多いです。今回も当初からチームに加わり、厳しい市場の中で“戦える商品”とはどういうものなのか、お客さまに選んでいただけるにはどういう商品がいいのか、をパッケージデザインという形で表現しました。
林 私は中味の開発を担当しました。ビールづくりでは、農作物である麦芽やホップといった原料にこだわり、その原料からいかにおいしさを引き出すかことができるかが醸造家の腕の見せ所です。日々おいしいビールをお客さまにお届けする一方で、新しい原料・新しいおいしさへの挑戦も続けています。そのなかで出会ったのが2019年にドイツで登場した新品種「ダイヤモンドホップ」です。「ザ・プレミアム・モルツ」のおいしさや愉しさを拡げるために、今回は特に香りに強くこだわり、「ダイヤモンドホップ」を用いて“複層的にふくらむ香り”を目指しました。
--商品化にはいろいろな課題があったかと思います
海老原 市場やお客さまの消費動向をみると、「ザ・プレミアム・モルツ」は、週に1回、月に2、3回飲むといった方が多いです。プレミアムビールですので、ちょっと贅沢(ぜいたく)なビールとう認識をもたれていると考えています。これは“ご褒美ビール”とも言い換えられ、多くのお客さまが“特別なもの”というイメージを持っている実態が見えてきました。限定商品では、この“ご褒美感”“特別感”を前面に打ち出したインパクトのあるものにしようと考えました。中味開発については、“ダイヤモンドホップ”という上質な原料を新たに使っている。このとても魅力的な原料をうまく活かしてお客さまに限定品の価値を伝えられないかということを考えました。
林 「ダイヤモンドホップ」は世界のホップ収穫量の1万分の1程度の量しか収穫されていない希少なものです。香りの特長を愉しんでいただけるために「ダイヤモンドホップ」をどう使うか、香りにあわせて麦の旨味をどう引き出すか、酵母がつくりだす香りとあわせて全体のバランスをどう調整するか、いくつもの条件について検討を重ねてきました。これは「ザ・プレミアム・モルツ」の限定商品という“特別な”挑戦だったからです。ビールに香りを求めている人はもちろんですが、ビールに香りを求めていない人にも、この「ザ・プレミアム・モルツ」の限定商品を飲んでもらって驚いていただきたいです。