小林喜光・前社外取締役
「不正会計 原発事業が大きかった」
--社外取締役として5年にわたり再建を進めた
「正直、よくここまで来たと思う。米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の巨額損失、米半導体会社ウエスタンデジタル(WD)との事業売却をめぐる争い、PwCあらた監査法人との対立による上場廃止危機を『3大Wの悲劇』と呼んでいるが、何とかくぐり抜けた。今は欧米の金融資本主義の中で苦しみながら、一番先頭を走っている会社という印象だ」
--火中の栗を拾う形で、経営再建に取り組んだ
「ベンチャー精神が豊かな会社がどうして不正会計でおかしくなったのかと気になっていた。そんな時に(東芝の相談役だった)西室泰三さんが『会社を救ってほしい』と訪ねてきた。経済同友会の代表幹事になったばかりで一度は断ったが、同友会は行動する団体でもあり、日本を代表する会社が悪くなるのを放っておけなかった」
--再建の過程で最も印象に残っていることは
「WHが米連邦破産法第11条(チャプター11)を適用申請して海外の原発建設事業から撤退したことだ。数兆円レベルの隠れた負債があり、チャプター11を適用申請しなければ、大変なことになっていた。結局、不正会計につながったのは原発事業が大きかった。メモリー事業も大きな投資が必要で、それによって他の分野が疲弊していた。こういう大事件がなければ、政府絡みの原発や、巨額投資が必要な半導体は切れなかった」
--車谷社長の評価は
「果敢に株主と対話しながら経営を行っている。プロパーの考え方を変えながら、営業利益率5%以下の事業をやめるなど明確な方針を打ち出し、スピード感はピカイチだ。今後はマーケットと深く会話しながら、新たな事業を創出するのが最大の課題だ」
--電機業界が生き残るには何が必要か
「第4次産業革命は完全にデジタルの時代。今はモノとコトをハイブリッドするところに付加価値を見つけなければいけない時代となり、米国のGAFAが覇権を握ったが、次はリアルとバーチャルをハイブリッド化した時代が到来する。東芝はそこを狙う。日本企業はリアルの良いデータを多く持っている。それをバーチャルとどう組み合わせ、プラットフォームを作っていくか。それが今後の電機メーカーが進むべき道だと思う」