変貌する電機 2020年代の行方

データサービス会社に転換する東芝 強みの社会インフラに集中 (2/2ページ)

 かつては部長や現場の担当者が社長室に入ることはなかったが改めた。分からないことがあれば、携帯電話で話すことも珍しくなく、若手が直接メールを送ることもある。ある幹部は「以前は社長が何を言っているのか、検証する会議もあったが、今は直接聞けるので素早く対応できる」と明かす。

 車谷社長はシーメンス日本法人元専務執行役員の島田太郎氏や日本IBM元技術理事の山本宏氏など外資系出身者を積極的に採用し、プロパー社員の意識改革を推進。特に若手が上司に自由に発言する機会を積極的につくるようにしている。

 だが、復活への道のりはまだ険しい。20年3月期に前期比3.7倍の1305億円の営業黒字を確保したが、新型コロナウイルスの影響で業績は不透明感が漂う。コロナ禍の中、21年3月期も営業利益は16%減の1100億円を見込むが、電子デバイス事業の低迷で20年4~6月期は126億円の営業赤字を余儀なくされた。

 債務超過を回避するため17年に行った大型増資で物言う株主が増え、その対応にも苦慮している。7月の定時株主総会で車谷社長の選任案への賛成比率は57.96%にとどまった。株主であるファンド側と取締役候補案をめぐり対立したためだ。当面は物言う株主と粘り強く対話しながら、改革を進めなければならない状況に置かれている。

 車谷社長は「東芝のDNAはベンチャー精神だ」と話す。環境エネルギーや医療分野でも有望な要素技術を持つ。東芝が開発し、大きく成長したフラッシュメモリーのように、こうした要素技術を事業化し、収益に結びつけられれば、東芝の復活は確かなものとなる。(黄金崎元)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus