話題・その他

長寿企業の果敢な取り組み 家訓と両立、事業環境に合わせ改革

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、倒産や廃業に追い込まれる企業が増える中、創業100年を超える長寿企業が新たな取り組みに果敢に挑んでいる。長い歴史にしばられて動きが鈍いと思われがちだが、事業環境の変化への機敏な対応こそが長寿企業の真骨頂だ。

 ピンチはチャンス

 「フラワーロス(廃棄される花)をなくし、生産農家を助けたい」

 花卉(かき)流通業者のジャパン・フラワー・コーポレーション(JFC、富山県射水市)の松村吉章社長は、コロナ禍によるイベント中止などで行き場を失った花の購入を呼びかける「2020スマイルフラワープロジェクト」を仕掛けた理由を語った。

 自宅にこもりがちな消費者に思いが伝わり、4月11日に立ち上げた同社の電子商取引(EC)サイトを通じ、累計300万本超の花が生産者から家庭に届けられた。

 同プロジェクトの真の狙いは、「生産者と消費者を直接つなぐ流通革命を起こす」。つまり、コロナ禍を機に花卉業界に変革を促すことにあった。

 花は通常、生産者から農協・生産組合、市場、卸業者、花販売店を経て、消費者に届く。それだけ中間マージンが発生し、店頭価格は上昇する。流通コストを省けば、価格を抑えられると考えてこのプロジェクトを始めた。

 実際、花農家がJFCを介して直接提供するため通常の3分の1から2分の1程度で提供でき、花の日常利用という需要創出につなげた。松村氏は「流通革命を起こせるとコロナ禍で確信した」と言い切る。

 松村氏には、「常識にとらわれず人のしないことに挑む。俊敏に動く」という同社創業以来のDNAが流れる。JFCは1874(明治7)年に「山文青果市場」として創業しており、1996年に生花部門が独立して誕生した。松村氏は7代目だ。

 DNAを感じるのは、3代目が大正時代後期に台湾バナナの北陸地方での専売権を取得したこと。高級品だが栄養価の高い健康食品との情報をつかみ、業容拡大の好機ととらえたという。

 パイオニアとして台湾バナナを広めるため、広告宣伝にも注力し、流通革命を起こした。

 松村氏は「先見性が重要というのが先祖からの教え。口伝えの家訓を、子供の頃から刷り込まれてきたから、コロナ禍を機に流通革命を起こすというミッションに俊敏に動けた」という。

 経済変化の兆し

 「コロナショックは社会経済の変化の兆し」-。長寿企業を研究している100年経営研究機構が5月に実施した長寿企業向けアンケート(回答95社)で、9割強の企業がこう答えた。

 多くの企業が売り上げの減少に直面しながら、全体の6割が1、2年の資金繰りにめどをつけた。インターネットを活用した販路開拓や、強みを生かした新商品・サービスの本格稼働に乗り出したことも分かった。

 同機構の後藤俊夫代表理事は「違う社会がくると認識し、内部留保と信用に基づく融資で足元を固めた上で長期戦を覚悟する。家訓、経営理念に導かれて『これまでも乗り越えてきた』経験から環境の急変にもたじろがない」と、長寿企業の秘訣を指摘する。

 1805(文化2)年創業の和菓子屋、船橋屋(東京都江東区)の渡辺孝至会長は、コロナ危機を乗り越えるため「10年に一度は必ずこういうときがくる。だからこそ、みんなで協力しあわなければならない」と社員に呼び掛けた。家訓を実践してきた創業家の一言が社員の安心感を誘い、一致団結という強みを発揮した。

 1851(嘉永4)年創業の吉村酒造(京都市伏見区)の6代目、吉村正裕会長は「ピンチのときに立ち戻るのは家訓」と強調。家訓を読み返すと「のれんを継承しながら新たな商いをつくり出していくこと。事業は変えてもいい」とあった。吉村氏は「子孫に伝えるべき家訓はきちんと残し、変えるべき事業は勇気を持って変える」と受け止めた。

 家訓通り、同社は江戸時代の野菜商、明治時代の精米業を経て、大正・昭和は酒造業、不動産賃貸業、倉庫業と事業を転換しながら発展してきた。

 ただ、長寿だから安泰というわけではなく、コロナ危機で経営に行き詰まる企業も出ている。東京・東銀座の歌舞伎座前の弁当店、木挽町辨松が4月、152年の歴史に幕を閉じた。創業100年を超す旅館が看板を下ろす事例も相次ぐ。

 JFCの松村氏は「7代続いたのは変化への素早い対応力」と説く。家訓や経営理念を守りつつ、事業やビジネスモデルを時代とともに変えることができれば、真の長寿企業になれる。(松岡健夫)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus