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使い捨て食器を“追放” 海なし県の「海ごみゼロ」活動

 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 ちょうど22日から29日まで、今年の「SDGs週間」に当たる。毎年、9月末の国連総会の会期に合わせて、「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進と達成に向けて、意識を高める狙いのイベントが続く。

 いうまでもなく「SDGs」は2015年国連総会において全会一致で採択された。貧困や差別の撤廃など経済、社会、環境にまたがる17の「目標」と169の「ターゲット」を設定し、30年までの達成を目指す地球規模の“挑戦”である。

 売店にリユース食器

 遠い世界の話にも聞こえる。しかし、要は一人一人が「未来のかたち」を考え、日常生活で小さな積み重ねを続けることではないのか。街角で胸に17色の丸いロゴをつけた人をみかけるにつけ、少しずつ理解の輪は広がっていると思いたい。

 折しも、日本財団が環境省と共同で実施する『海ごみゼロアワード2020』の最優秀賞に、サッカーJ2のヴァンフォーレ甲府を運営するヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ(以下、山梨)が選ばれた。このアワードは国内の優れた海洋ごみ対策を発掘し、顕彰、意義を発信する目的で創設。第2回となる今年は自治体、学校、民間団体など314件の応募があった。

 「ヴァンフォーレ甲府エコスタジアムプロジェクト」と題された山梨の取り組みは、使い捨て食器の“追放”である。

 ホームゲームを開催する山梨中銀スタジアム(山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場=甲府市)に出店する売店で提供する飲食品にリユース食器を使用。料金に100円のデポジットを上乗せ、返却時に100円を返金する仕組みだ。山梨のSDGs推進担当、佐々木大喜さんによれば、「(昨年までの)16年間で99万個のリユース食器を使用し、76.2万トンの二酸化炭素(CO2)を削減」「杉の木5445本が1年間に吸収するCO2量にあたる」効果があったという。

 こうした山梨の取り組みは04年、リユース食器のレンタル活動を行う認定法人「スペースふう」の提案がきっかけだった。当初は売店や利用するサポーターから反発もあったが、趣旨を説明していくうちに理解が広がっていった。山梨の佐久間悟代表取締役ゼネラルマネジャーは「飲食売店やサポーターが思いをくんでいただき、地域と一体になって取り組んできた結果」だと総括する。

 この山梨の取り組み、顕彰にはさまざまな学びがある。

 一つは海なし県での「海ごみゼロ」への取り組みである。代表的な海ごみであるプラスチック袋やペットボトルなどは直接、海に投機される以上に、陸上からの、そして海に流れ込む河川からの影響が懸念されている。上流の山梨県での活動が高く評価された要因であった。

 そして、ごみの削減をねらったリユース食器の活用が使い捨て食器の量を減らし、結果的にCO2削減につながった事実である。しかも山梨の取り組みは「SDGs」が採択される11年前。自発的な活動が時代を先取していたといっていい。

 必要不可欠なツール

 スポーツにおけるSDGsというと、目標3の「すべての人に健康と福祉を」や同5「ジェンダー平等を実現しよう」に目が向きがちだ。一方、国連は「スポーツは持続可能な開発における重要な鍵となる」とみなしている。必要不可欠なツールと言い換えてもいい。山梨の活動は確かに目標14「海の豊かさを守る」に相当するほか、同15「陸の豊かさも守ろう」や同13「気象変動に具体的な対策」にもつながる。また、クラブと地域が一体になった取り組みは目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に他ならない。

 もちろん、山梨以外にもこうした活動を実践する競技団体や球団、クラブも少なくない。新型コロナウイルス禍で社会と個人のあり方が問われるなかで、影響力を持つスポーツ組織の役割は大きい。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大および立教大兼任講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。著書に『嘉納治五郎』『中村裕』『スポーツと地方創生』(共著)など多数。

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