9番目、10番目の柱を作る
オープンイノベーションは今では当たり前のスタイルだが、三菱電機は従来のビジネスモデルからまだ脱却できていない。ベテランのプロジェクトマネージャーの森垣努氏は「モノを作って売ることを長くやってきたので、正直なところ、サブスクリプション(定額課金)など新たなビジネスモデルに発想を転換するのに苦労している」と明かす。
グループで約14万6000人の社員を抱える三菱電機は8つの事業本部があり、それぞれが1つの会社のように独立している。入社後に各事業本部に配属されると、半数以上の社員が異動せず、そこで定年を迎える。こうした社内構造が縦割り意識を生んできた背景にある。杉山社長は「今後は事業本部間の異動を増やす」とし、BI本部の設置を機に社内風土の改革にも踏み出す決意だ。
現在、BI本部は月1回のペースでアイデア出しを行い、実用化に向けて議論を重ねている。既に新型コロナや災害への対策など複数の開発プロジェクトが動き出している。森垣氏は「せっかくBI本部が立ち上がったので、生活やビジネススタイルを変える大きなイノベーションを起こしたい」と意気込む。
中計目標の未達確実
優等生とされてきた三菱電機だが、足元の業績は厳しい。新型コロナや米中貿易摩擦の影響で主力のFA機器や自動車機器の販売が落ち込み、21年3月期の営業利益は前期比53.8%減の1200億円の見通し。営業利益率は前期の5.8%から2.9%に下がり、今期が最終年度となる中期経営計画の8%以上の目標は未達に終わることが確実だ。
何より、成長を支えてきたFAや自動車機器事業で構成する「産業メカトロニクス」部門の利益率が年々低下している。杉山社長は「これから8つの成長事業に続く9番目、10番目の事業の柱をBI本部が中心となって立ち上げないと生き残れない」と危機感を隠さない。
電機業界を取り巻く環境の変化は激しく、変革はスピードも問われている。新たな事業を生み出し、従来のビジネスモデルをどう転換していくのか。来年1月に創業100周年を迎えるのを前に模索が続いている。(黄金崎元)