金融

デジタル通貨の発行作業加速 日米欧中銀は「リブラ」や人民元警戒

 欧州連合(EU)がデジタル通貨規制議論を進める裏で、日米欧の中央銀行が自国・地域のデジタル通貨発行に向けた作業を加速している。会員制交流サイト(SNS)の巨人、米フェイスブックが昨年、国家の枠を超えた暗号資産(仮想通貨)「リブラ」計画を発表して以降、通貨主権を意識。先行する中国とのデジタル通貨覇権争いも激しさを増している。

 「潜在的なリスクを軽減しながら、デジタル変革を積極的に受け入れるべきだ」。EU欧州委員会のドムブロフスキス執行副委員長は、24日のデジタル通貨規制案に関する声明で技術革新と規制を両立させる重要性を強調した。

 一方、欧州では中銀によるデジタル通貨「デジタルユーロ」の検討が進む。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は「(リブラなど)民間に代わる選択肢を提供しうる」と意義を強調。発行するかどうかの判断を近く示す可能性がある。

 既に国内でデジタル人民元の実験を始めた中国。「デジタル通貨で国際的な主導権を握る必要がある」。中国人民銀行(中央銀行)系の雑誌に最近掲載された論文が話題を呼んだ。

 目的は明確だ。「中国は米ドルの独占体制を打破しなければならない」。デジタル人民元が実現すれば、米ドルが約4割を占める現行の国際間の決済に風穴をあけることができる。

 基軸通貨ドルを手に、世界の覇権を握り続けてきた米国はデジタル通貨に慎重姿勢を続けてきたが、ドル弱体化に危機感を募らせ、今年に入り一転して検討を加速させた。

 クリーブランド連銀のメスター総裁は23日の講演で「新型コロナウイルスの感染拡大は決済方法や支払いの慣行に著しい変化をもたらした」と述べ、米連邦準備制度理事会(FRB)内での「デジタルドル」をめぐる研究の詳細を明らかにした。

 6月にはFRBのパウエル議長がドルのデジタル化を「真剣に検討していく」と表明、地位死守へ本腰を入れる。

 デジタル通貨発行に後ろ向きとされてきた日銀も、最近はその姿勢に変化が見える。7月には「デジタル通貨グループ」を発足させ、実証実験に向けて民間企業と協力する意向も示している。

 黒田東彦総裁は「技術革新のスピードの速さを踏まえると、社会からのニーズが急速に高まる可能性がある」と話している。(東京、北京、ワシントン、ロンドン 共同)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus