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自販機、コロナ禍で転機 設置数、販売鈍化も衛生面再評価

 顔認証など新機軸模索

 国内設置台数が400万台を超える自動販売機が転機を迎えている。省スペースを活用できる利便性などで約20年前までは設置台数が広がったが、コンビニエンスストアの普及などで売り上げが減少。今年上半期は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛のあおりも受けた。その一方で、非対面型の販売が可能など、コロナ禍での強みも見直されており、飲料各社や自販機メーカーは新機軸を模索している。

 東京都内にあるオフィスビル。入居するクレジットカード大手JCBの社員らが頻繁に足を運ぶのは、2台並んだ大型自販機だ。ファミリーマートが手がけるコンビニ商品の自販機「ASD」で、おにぎりやサンドイッチだけでなく、冷やし中華などの麺類に至るまで、コンビニでおなじみの顔ぶれがずらりと並ぶ。

 JCBは新型コロナの感染拡大防止のため、このビルで働く社員数を以前より大幅に抑えているが、ファミマによると、7月の自販機の売り上げは前年を超えた。「毎日のように利用する」という男性社員は「ビル1階のコンビニよりも近い。新型コロナの影響で同僚とランチを一緒にしなくなり、結果的にここで買うことが増えた」とコロナ禍での利便性を強調する。

 ファミマによると、これまでASDに対する問い合わせは、既存の自販機の入れ替えや事務所移転などに伴う導入検討などが主だった。だが、新型コロナの感染拡大が顕在化して以降は、それらに加えて、「営業時間を短縮した売店や食堂の代わりに設置を検討したいなど、コロナ禍において社員の福利厚生を確保したいといった内容が増えた」(担当者)という。

 新生活形態に適応

 自販機は省スペースで商品販売ができる利点から全国に広がり、日本自動販売システム機械工業会によると、2000年には全国の設置台数は約560万台まで伸びた。だが、その後はコンビニの台頭などで減少傾向に転じた。昨年の設置台数は約410万台に落ち込み、飲料総研によると、自販機での飲料の販売数量もピーク時の7割程度だ。

 自販機メーカーでも、パナソニックが自販機の生産・販売の年内終了を明らかにするなど、事業撤退の動きが出ている。

 加えて足元では、新型コロナの感染拡大に伴う外出自粛が広がる中、観光地や都市部の駅、オフィスなどに設置された自販機を中心に販売が落ち込む。

 飲料総研の調査では、5月の飲料販売数量は前年同月比37%減。緊急事態宣言が解除された後の6、7月も1割以上のマイナスだ。飲料メーカーも、4~6月期はコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(CCBJH)が前年同期比26%減。ダイドードリンコも2~7月期で1割近く販売数量を減らした。

 だが一方で、新型コロナは新たな自販機へのニーズも生み出している。販売員を必要としない自販機は「非対面型で衛生的」な販売チャンネルであるだけでなく、省スペースでの設置が可能なため、ファミマのASDのように“コンビニより近い店舗”として、なるべく外出せずに自宅や職場近辺で過ごしたいという新たな生活スタイルにも適応しやすい。

 コロナ禍で必需品となった物品の緊急調達先としても重宝されている。羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデングは、マスクの自販機を7月に空港ターミナル内に設置した。CCBJHも同月、東京都内の大型商業施設などで冷えたマスクの自販機販売を試験的に始めた。「密」が起きやすい場所での緊急需要を見込む。

 マスク自販機を製造する富士電機の担当者は「交通機関や商業施設など30社以上から引き合いがある」と手応えを強調する。

 コスト構造にもメス

 こうした中、コロナ対応としてだけではなく、自販機販売の魅力そのものを高めていこうとの取り組みも加速する。

 ダイドーは顔認証決済ができる自販機の実証実験を7月から開始。小銭などを持ち運ぶのが難しい工場などでの利用を想定する。実験結果も踏まえ、来年から本格展開を予定する。サントリー食品インターナショナルは、スマートフォンアプリによる健康管理と組み合わせ、オフィスに設置した自販機でアプリが発行するクーポンと健康飲料の引き換えもできるサービスを展開する。

 飲料売り上げの14%が自販機という伊藤園は、衛生面での強みを打ち出す。茶殻に含まれるカテキンなどの抗菌効果を生かした抗菌シールを壁紙メーカーなどと共同開発。全国約3万台の自販機の購入ボタンや取り出し口などにほぼ貼り終えた。担当者は「新型コロナ収束後も衛生面重視の考えは消費者に残るはずだ」と先を見据える。

 コスト構造にもメスが入る。CCBJHは商品補充を行うスタッフなどの配送ルートや頻度などをゼロベースから見直すことで、スタッフの業務を効率化。残業代などの削減につなげる。ダイドーも一台一台の自販機に通信機器を取り付け、販売データをタイムリーに把握する取り組みを進めている。

 CCBJHのカリン・ドラガン社長は「消費者は利便性にお金を出していいと考えており、自販機は間違いなくこの要望に応えられる販売チャンネルだ。今後も最先端のツールとなり、消費者は自販機で買い続けるだろう」と将来における有望性を評価している。(佐久間修志)

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