高論卓説

リモート時代の会議進行術 あれこれ欲張らず目的ごとに実施

 対話や会議で確実に合意形成するための手法をその場で身に付ける演習プログラムを、対面やリモートで実施している。企業の各層の人たちに会議の状況を聞いてみると、「一定時間内で合意形成できない」と答える人が多い。理由として、「途中から異論や懸念が噴出して収拾がつかず、延々と会議が続く」いわば「時間切れの会議」ばかりだという声もある一方、逆に「誰も何も発言せずに、淡々と会議が終わるが、実行に移されない」という「見せ掛けの会議」が繰り返されるという声に二分される。

 そこで、「洗い上げ質問」により異論や懸念を洗い上げ、「掘り下げ質問」により最も深刻な順に掘り下げ、「示唆質問」によりその順に異論や懸念を解消する示唆を出し合って合意形成し、「まとめの質問」により合意確認する、4つの質問による合意形成手法を広めている。

 演習を実施した企業では、「会議時間が短くなった」「確実に合意形成できるようになった」「会議からの腹落ち度合いが高まった」「質問を多用するようになり、互いの意見を尊重する風土が浸透した」というフィードバックをいただく。

 しかし、中には、「意見が散乱して、進行役がコントロールできずに終わってしまった」「4つの質問を繰り出したが、意見が出なかった」というケースもある。スキルを修得したにもかかわらず合意形成できなかった会議には、共通の傾向がある。会議の中で、あれもこれも、異なる目的を果たそうとしているのだ。

 せっかく時間を割くのだから、経営者からのメッセージも伝達して参加者に徹底することも実施したい、取り組み状況の確認もしなければならない、懸念のありそうな事項についてはメンバー間で合意形成もしたい、方策についてもアイデア出しもしたい、と欲張ってしまっているというわけだ。

 伝達の目的を果たすためには、メッセージを明確に伝え、聞き手は虚心坦懐(たんかい)に傾聴することが重要だ。取り組み状況の確認のためには、報告するスキルが必要だ。合意形成のためには異論や懸念が躊躇(ちゅうちょ)されずに共有される場づくりが不可欠だ。アイデア出しには肩ひじはらずに自由闊達(かったつ)な意見を吐露してもらう進行術が必要だ。

 つまり異なる目的の会議を連続した時間帯で実施することは、進行役のスキルや、参加者の行動や話法の組み合わせや切り替えが必要となり、一気にスキル発揮の難易度が上がる。

 そこでお勧めは、伝達の目的ならば伝達の会議だけを、確認の目的ならば確認だけを、合意形成の目的ならばそれだけ、アイデア出しの目的ならばそれのみの、目的合理性のある会議を行うことだ。会議の目的一貫性が保たれて、目的にかなった進行術と行動と話法だけを繰り出することで、会議の目的を実現しやすくできる。

 合意形成の会議だろうが、アイデア出しを目的としていようが、冒頭でリーダーがあいさつしなければならない、業績確認しなければならないという暗黙ルールが存在する会社が多い。合意形成やアイデア出しの会議では、リーダーのあいさつも、業績確認もやめてしまえばよい。意外なほど、目的が果たされることに気づくに違いない。リモートで会議時間が短くなったが、欲張って、異なる目的を盛り込んではならないのだ。

【プロフィル】山口博

 やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役。慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年モチベーションファクターを設立。横浜国大非常勤講師。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社)。長野県出身。

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