話題・その他

核ごみ処分場選定 現世代解決へ意義ある表明

 「トイレのないマンション」。日本の原子力発電所はこう揶揄(やゆ)されてきた。見た目はきれいでも、発電過程で生じた放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないからだ。

 原発で使った核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムやウランを再び使う核燃料サイクル計画の過程でも、放射能レベルが高い廃液が3%ほど残る。この廃液をガラスと混ぜて固めた高レベル廃棄物は、最終処分場となる地下300メートル以上の深い岩盤に半永久的に隔離する計画だ。

 政府と電力業界は2000年、この最終処分場の立地選定と建設、運営を担う「原子力発電環境整備機構(NUMO)」を設立し、02年から全国の市町村を対象に処分地の公募を始めた。

 だが、応募しようとしても実際にはできない状況が続いてきた。熊本県御所浦町(現・天草市)の議会は04年3月に誘致を固めたものの、4月に計画が表面化した途端に周辺市町村が反発。鹿児島県笠沙町(現・南さつま市)も05年1月、無人島への誘致を表明したが、町職員労働組合や漁業協同組合の激しい反対にあって3日後には撤回に追い込まれた。

 そして高知県東洋町。07年1月に初めて申請したが、反対派が押し寄せるなどして調査の受け入れ断念に至った。それから13年。今回、北海道の2町村が調査の応募・受け入れを決めた。北海道の鈴木直道知事は、文献調査の次の段階である概要調査に進む場合は知事権限で反対する意向を示している。梶山弘志経済産業相も、知事から反対があれば先に進まないとしており、最終的に処分場建設に至るかは予断を許さない。だが2町村が決断した意義は大きい。

 高レベル廃棄物は、いずれ必ず処理しなければならない問題だ。将来世代に先送りすることなく、現在の世代で解決する必要がある。原発推進、反対にかかわらず、今回の2町村の表明を国民全員で核のごみの最終処分について考える機会にしたい。トイレのないマンションに人は住めないのだ。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus