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年間赤字は10億円…債務超過に陥った佐渡汽船 新型コロナで壊滅的状況に

【深層リポート】

 新潟県佐渡市と新潟市などを結ぶ離島航路を運営する佐渡汽船(本社・佐渡市)が経営危機に直面している。令和2年6月中間連結決算(1~6月)で17億4100万円の最終赤字を計上して債務超過に陥り、決算短信に「継続企業の前提に関する注記」を記載した。県は支援に乗り出す方針だが、改善への先行きは視界不良だ。

 企業は、将来にわたり事業を継続していくことを前提にしている。しかし、深刻な業績悪化により、事業の継続に重大なリスクが生じた場合、決算短信などに「継続企業の前提に関する注記」としてリスク内容を記載し、投資家などに注意を促す。

 最近では、アパレル大手レナウンの元年12月期連結決算短信に注記が記載され、同社は5月、東京地裁から民事再生手続き開始の決定を受けた。注記を記載した佐渡汽船の経営改善は待ったなしとなっている。

 コロナが追い打ち

 同社の経営悪化の大きな要因の一つは、旅客輸送人員の減少だ。平成26年に年間158万人だったものが、令和元年には147万人と10万人以上減っている。これは、佐渡を訪れる観光客の減少が影響しているとみられる。

 県の観光入込客統計では、平成26年に佐渡を訪れた観光客は年間延べ153万人。これが令和元年には同123万人と30万人も減っている。この間、同社の連結最終損益も赤字が目立つ。

 国土交通省OBの花角(はなずみ)英世知事は、佐渡の観光客減少について「旅行の形態が団体中心から個人や少人数グループに変わってきている中、旅行の目的も食だったり体験型の観光だったりと多様化している。そうした観光ニーズに十分にこたえられなかったことが背景にあるとみている」という。

 窮状に追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動や外出の自粛である。同社の旅客輸送は4月が前年同月比79%減、5月が同86%減、6月が同64%減と、壊滅的な状況に陥った。その結果、8月12日発表の6月中間連結決算で5680万円の債務超過に陥った。

 当面の経営改善策

 佐渡汽船は7月7日、県や関係市、県内の交通・観光事業者などからなる佐渡航路確保維持改善協議会(会長=田中昌直・県交通政策局長)に経営改善案を提示。目玉は、赤字が続く小木(佐渡市)-直江津(上越市)航路で使用している高速カーフェリーを売却し、新たにジェットフォイル(高速旅客船)を導入するというものだ。

 「この航路の赤字額は年間10億円ほど。ジェットフォイルにすることで整備費用などが軽減され、赤字額を4億円ほど圧縮できるとみている」と同社の尾崎弘明社長は説明する。しかし、抜本的な改善策とは言い難く、赤字体質からの脱却は難しい状況だ。

 地域の重要交通インフラとして何としても維持しなくてはいけないが、肝心の輸送量はじり貧状態が続く。地元の第四銀行は7月下旬、新型コロナの影響で大きなダメージを受けた佐渡汽船に運転資金として10億円、さらに8月末には取引金融機関3行が14億円を融資し、オール新潟で支えている格好だ。

 抜本的な経営改善策を見いだせない中、花角知事は「国に離島航路である佐渡航路へのさらなる支援を求めていきたい」としている。

 【佐渡汽船】 佐渡-新潟本土間の離島航路を運営する海運会社。本社は新潟県佐渡市。ジャスダック上場。筆頭株主は同県(保有比率約38%)。昭和7年、佐渡航路で競合していた商船会社3社を経営統合し、県も資本参加して誕生。両津(佐渡市)-新潟(新潟市)、小木(佐渡市)-直江津(上越市)の2つの定期航路を持つ。グループ会社は昨年末時点で11社あり、一般貨物・自動車運送、旅行・観光業などを営む。

 【記者の独り言】 佐渡汽船の経営問題は、日本の課題の縮図でもある。佐渡市の人口は昭和40年に10万人超だったが、今年7月1日現在は約半分の約5万2000人と推計される。佐渡を訪れる観光客も、平成26年の年間延べ153万人から令和元年には同123万人に減少。過疎化とともに「島内の産業の衰退も進んでいる」(信用調査機関)うえ、新型コロナウイルス対策とも向き合わなくてはならず、経営改善は一筋縄ではいかない。(本田賢一)

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