現場の風

ソフトバンク 東大とAI共同研究、迅速に事業化へ

 ソフトバンク 技術戦略統括AI戦略室室長・松田慎一さんに聞く

 --ソフトバンクと東京大学の人工知能(AI)の共同研究機関「ビヨンドAI研究推進機構」が始動した

 「中長期的な基礎研究テーマ10件を選び、東大本郷キャンパスに設けた拠点で7月末に研究が始まった。これとは別に、ソフトバンクが今秋から移転を進めている東京・竹芝の新本社にも拠点を設け、ソフトバンクの事業に直結するような研究も今年度中に開始する予定だ」

 --どのような研究体制か

 「研究員の規模は100人程度。ソフトバンク側にもデータ分析などを支援する人員が50人ほどいる。親会社のソフトバンクグループ(SBG)やヤフーも参画し、今後10年で最大200億円を拠出する」

 --東大とタッグを組んだ背景を

 「今、世界でAIを引っ張っているのは米国と中国だ。中国は国を挙げての研究や産官学の強い連携で急伸しており、米国ですらうかうかしていられないくらいだ。こうした危機感からAI研究に強く取り組む必要性について、SBGの孫正義会長兼社長と東大の五神真総長がトップ同士で意気投合したところが大きい」

 --機構の特長や強みは

 「初期段階から事業化を見据えた研究を行い、東大と経済産業省が新設した『CIP制度』と呼ぶ仕組みを使って研究成果を迅速に事業化することができる。世界的に著名な研究者で構成するアドバイザリーボードも設置しており、海外の優秀な研究者との連携もしやすい」

 --今後の展望を

 「研究成果はヘルスケア、スマートシティ、次世代移動サービス『MaaS』、ロボティックスなどの領域で生かす。他社と差別化できる次世代のAIを生み出し、それを基に新規事業をどんどん進めていきたい。10年間で10件の事業化を目指している」

【プロフィル】松田慎一

 まつだ・しんいち 早大院修了。2013年ソフトバンク入社。AI技術を用いたソリューション開発に従事し、IoT&AI技術本部副本部長を経て20年4月から現職。愛知県出身。

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