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調理場シェアで宅配に活路 苦境飲食、新業態を模索

 新型コロナウイルスで客足が大幅に減少している飲食業界で、宅配専門店に活路を求める動きが広がってきた。客席を持たない小規模なキッチンだけの新たな業態で「ゴーストレストラン」などと呼ばれる。飲食店が新しい生活様式に適応する形態を模索している。

 東京・目黒のビルのフロアに、調理場だけが4つ並ぶ施設「KitchenBASE(キッチンベース)」がある。その一角では中華料理を宅配する「トミーズキッチン」のシェフ富谷宗久さん(61)がタブレット端末で注文を受けて鍋を振る。できた料理は食事宅配サービスの配達員が届ける。

 老舗の中華料理店などに33年勤め、妻いそみさん(60)と8月に店を開いた。出張料理人も考えたが新型コロナの影響で断念した。メニューは本格的なエビチリなど約30品。富谷さん夫妻は「自分たちのペースで独立したかった。順調とは言えないけど」と話す。

 飲食業界には逆風が吹いている。日本フードサービス協会によると、外出自粛や営業時間短縮で8月の飲食店全体の売上高は前年同月比16.0%減と落ち込みが続く。

 一方で食事の宅配市場は拡大。調査会社のエヌピーディー・ジャパンによると、2019年は前年比2.4%増の4182億円。20年も新型コロナの感染が深刻になった4月以降は伸びており、レストラン「カプリチョーザ」を展開する飲食チェーンWDIは6月に宅配専門店を始めた。

 「宅配市場はもっと大きくなる」。キッチンベースを運営する「SENTOEN」(東京)の社長の山口大介さん(28)は話す。昨年目黒で立ち上げたのに続き、今年9月には新宿にも規模を広げた新たな施設をオープン。利用の申し込みが相次いでいるという。

 入居費用は相場の5分の1程度という100万円ほど。同社がこんろや冷蔵庫を用意し、約1カ月で開業できるようにした。注文を受けるタブレット端末を手配し、見栄えのする写真の撮り方や商品名の付け方などの助言もする。

 低コストで開業できる仕組みは新規参入組にも好評だ。海鮮丼店を営む岡田美幸さん(41)は10年以上勤めた金融業界から飲食業に転じた。魚介はインターネットで産地から直接仕入れ、調理場が隣り合う富谷さんらにメニュー開発や試食で協力してもらう。「店を借りるのには時間もお金もかかる。ここだと同業者からアイデアももらえる」と話した。

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