損害保険ジャパンが中小企業のM&A(企業の合併・買収)で発生する損害リスクに対応した保険を月内にも発売することが27日、分かった。買収完了後に未払いの給与や税金が発覚し、売り手が資金不足で補償できない場合のリスクに備える。多くの中小企業が後継者不在や雇用維持に悩む中、円滑な事業承継を後押しし、地方創生にも貢献する狙いだ。
買収金額5千万~10億円規模のM&A案件の買い手に向けて売る。最低保険料は30万円で、保険金額は1千万~10億円の6通り。損害が発生した場合は100万円までを自己負担する。
令和3年度に70件、収入保険料1億5千万円程度を見込む。新たな収益源としてM&A仲介に注力する地方銀行と連携し、販売拡大を目指す。地銀にとってこの商品は、買い手と売り手のトラブルを回避し、地元企業の長期的な支援につなげることが期待できる。
M&Aでは、売り手が買い手に対し、対象企業の財務や税務に関する開示内容に虚偽がないことを示す「表明保証」という手続きを取るのが一般的だ。売り手がこれに違反し、未払いの給与や税金、簿外債務が発覚した場合、買い手は売り手に損害の補償を求めることができるが、泣き寝入りせざるを得ないこともあるという。
M&A助言のレコフによると、国内企業同士の昨年のM&A件数は3千件と、5年前から倍増。新型コロナウイルス禍で今後、事業承継のニーズはさらに増える可能性もある。