ナニワのカリスマ添乗員として知られる平田進也さんと8月下旬、旅の日帰り研修を行った。1年間に1億円を稼いだら「すごい」と言われる旅行業界で、何億円も稼ぐ人だ。とにかく、平田さんは旅行の間中、お客さんを笑わせる。そして毎回、旅の中に最高のエンターテインメントを準備している。(大谷由里子)
日帰り研修を企画したのはコロナ禍の今春のことで、1週間ほどで申し込みは満席となりキャンセル待ちも続出した。一方、新型コロナウイルスの感染拡大は、なかなか収束しない。5、6月にはキャンセルが出始めた。「どうしよう」と思ったものの、キャンセル待ちの人たちが順次繰り上がり、ピッタリ予定の人数となった。平田さんは、PCR検査を前日に受けて添乗し、感染症の対策を万全にして決行となった。行き先は、平田さんお勧めの淡路島(兵庫県)。バスの中では、平田さんの爆笑トークが展開された。バスの中、現地の食事会場でも盛りだくさんのイベントがある。期待通り、山盛りの学びに参加者は笑顔となる。
旅行業界の「今」も見せつけられた。人気のサービスエリアに止まっている観光バスは私たちだけだった。新大阪の団体バスの発着場も私たちのバスしかない。立ち寄ったお土産屋さんも閑古鳥が鳴いている。廃棄処分されるお土産は山ほどあるらしい。同行してくれた日本旅行の法人営業の担当者に現状を教えてもらった。「会社にいても電話は鳴りません。かといって、自分たちから旅行の営業もかけられない。Go To トラベルは個人の旅行はあっても、法人は、動きません。褒賞旅行や社員旅行、接待旅行もほとんどないのが現実です」
大手旅行会社のいくつかは、夏のボーナスを一部カット、ボーナスが出ない会社もある。小さな旅行会社は、閉鎖の危機という。平田さんが言った。「これが、今の旅行会社の現実や。ちゃんと、見ておいてや」。わたしにできることは何だろう。こうして、「学ぶ場所」としての旅を企画することはできる。
帰り道、ウィズコロナの団体旅行のあり方を、いろいろと考えてみた。大好きな観光業界に役に立つ企画、盛り上がる企画を、今日も考えている。
【プロフィル】大谷由里子 おおたに・ゆりこ 奈良県生まれ。1985年、吉本興業入社。横山やすしのマネジャーを務め、宮川大助・花子などのタレントを次々と売り出した「伝説の女マネジャー」として知られる。2016年3月、法政大学大学院・政策創造研究科を修了。「笑い」を用いた人材育成法は、NHKスペシャルや日本経済新聞など多くのメディアで話題に。著書は35冊を数える。