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雇用シェアは「日本の企業風土に合っている」 航空→自治体 外食→介護

 新型コロナウイルスの感染拡大で業績に打撃を受けた業界を中心に、従業員を異業種に出向させる「雇用シェア」の取り組みが相次いでいる。収益悪化で重くのしかかる人件費負担を緩和しながら貴重な戦力を温存できるのが利点。人材を融通するための新事業を立ち上げる動きも出ており、緊急時に雇用を維持できる新たな仕組みとして注目が集まっている。

 「社員の公募を原則に、先方との要望がマッチする出向は進めている」。日本航空の植田英嗣常務は10月30日の決算会見で、4月から自治体や教育機関などに向け、客室乗務員や空港スタッフなどを出向させていたと明らかにした。

 10月には1日当たり最大で500人ほどが出向したという。新型コロナで旅客需要が減少しており、人件費負担を軽減するとともに社員に活躍の場を与えるのが目的だ。

 航空業界ではANAホールディングス(HD)もグループ社員を家電量販店ノジマや高級スーパーの成城石井などに一時的に勤務させる方針を示しており、来年春までに400人以上を送り出す計画だ。片野坂真哉社長は「雇用を守りながら強靱(きょうじん)なグループに生まれ変わる」と話す。31日には自治体として初めて三重県がANAグループ社員の受け入れを表明した。

 財務省の法人企業統計調査によると、企業の売上高から原材料費などを除いた「付加価値」のうち、人件費は6割台後半で、収益が悪化すると固定費として業績を圧迫する。一方、今後の人手不足も念頭に雇用維持も欠かせない。日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、9月の全規模全産業の雇用人員判断は人手不足を示すマイナス6。先行きはマイナス10と不足感は強まる見通しだ。

 こうした状況で浮上したのが「雇用シェア」。リクルートワークス研究所の中村天江主任研究員は「解雇や希望退職以外の選択肢が示せるため、雇用維持を重視する日本の企業風土に合っている。企業は業績回復に備え、優秀な社員を確保できる」と分析する。

 人材を融通しやすくするための態勢整備も進む。外食大手ワタミは5月、新たな人材派遣会社「ワタミエージェント」を設立した。従業員約1万人を対象に、小売りや介護などの事業者に派遣する。非常時に休業した店舗スタッフなどの働く場を確保する。

 中村氏は「今後も労働需給バランスの激変が起きた際、新たな雇用の手法として取り入れる企業が出てくるのでは」と話している。(佐久間修志、大坪玲央)

 主な企業の出向状況(企業名/主な出向先や内容)

・日本航空:ヤマトHD、KDDI、官公庁、教育機関などに10月時点で1日当たり最大約500人が出向

・ANAHD:KDDI、ノジマ、成城石井、鳥取県内企業などに2021年春までに400人以上が出向予定

・ワタミ:新会社「ワタミエージェント」を設立し、小売りや介護施設に派遣 

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