テクノロジー

不動産売買もデジタル化で非接触・非対面 課題は業者のリテラシー

 ITを不動産分野に活用する「不動産テック」の導入が進んでいる。新型コロナウイルス感染拡大で非接触、非対面のサービスが求められる中で、時間や場所を問わずにパソコンやタブレットを使って情報収集したり、一部の不動産契約を行ったりできるからだ。住宅市場は人口減少と景気減速が重なり縮小傾向にあるが、不動産テックで利便性を高めることができれば、新たな市場開拓も可能になる。

時間や場所問わずに

 不動産業界向けのマーケティングシステムを提供するマーキュリー(東京都新宿区)は、不動産情報のプラットフォーム「Realnet(リアルネット)マンションサマリ」の提供を3月から開始した。

 従来は主に新築マンションのデベロッパー向けに展開していたが、専用ソフトをインストールした特定のパソコンで利用しなければならなかった。ただ、コロナ禍によって自宅など会社以外の場所で仕事をするビジネスパーソンが増えており、インターネット環境があれば時間や場所を問わずに、個人のパソコンやタブレットからサーバーにアクセスできるよう利便性を向上させた。

 マーケットデータの活用は中古流通業界も含めて増加しているといい、同社の大寺利幸取締役は「今後もビッグデータを活用したサービスを軸に、不動産業界のデジタル化をサポートしたい」と話す。

 不動産テックの活用を国も後押ししている。不動産契約の際に行う重要事項の説明は法律上、対面で行わなければならないが、国交省はテレビ会議などのITを活用して重要事項を説明する社会実験を進めている。

 不動産業者のリスト(横浜市中区)は、この実験の登録業者として不動産売買契約を完全非対面で行っており、香港在住の投資家と国内不動産物件の売買契約が成立した。リストは「海外との往来が難しい中で成約につながった」と評価。今後もITを積極的に活用していく。

 クラウドを活用した不動産テック企業、いい生活(東京都港区)は、入居申し込みウェブシステム「Sumai Entry(すまいエントリー)」を提供している。

書類をアップロード

 不動産契約では店頭での書類のやり取りが煩雑。入居申し込み時には不動産会社や家賃保証会社、火災保険会社などとの間で電話やファクスのやり取りも多い。すまいエントリーでは、入居希望者に提出してもらう書類などをウェブ上にアップロードすることで店頭に行く回数を減らし、入居希望者と賃貸仲介会社、不動産管理会社、家賃保証会社との申し込み受け付けや審査をペーパーレス化できる。

 こうした点が評価され、東京都と愛媛県の不動産会社2社が9月にすまいエントリーを採用した。いい生活の北澤弘貴代表取締役COO(最高執行責任者)は「コロナによって、来店してもらい、書類をたくさん記入してもらうことの不便さとリスクが顕在化した。業界内で場所と時間を選ばないシステムのメリットの理解が進んでいる」と話す。

 不動産テックではほかにも、オンライン会議による申し込みや仮想現実(VR)を活用した物件見学などのサービスもあり、利用が進んでいる。

 マーキュリーの大寺氏によると、「不動産テックの将来性は理解しているものの、積極的に実践している会社は3割にすぎない」という。今後は、多様化したサービスを不動産業者が使いこなせるかが課題となる。(鈴木正行)

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