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国費500億円つぎ込むも、誤算続きの国産ジェットに未練「ここまで来たのだから…」 

 【失意の翼】(下)

 政府、国費500億円「今は我慢」

 「今は我慢だが、ここまで来たのだから(事業化まで)初志貫徹してほしい」。経済産業省幹部は三菱重工業のスペースジェット(旧MRJ)事業への未練を隠さない。国産初のジェット旅客機という「夢」の実現に向け、累計約500億円の国費をつぎ込み、国の成長戦略に盛り込んだ看板政策だった。

 国産ジェット旅客機の構想は経産省の音頭で2000年代初頭に浮上。約100万点の部品からなる航空機は産業の裾野が広い。日本の航空機産業は19年に約1兆8000億円規模に達したが、米ボーイング向け部品供給が大半を占める「下請け」(関係者)にすぎない。

 自動車や電機大手が海外に生産拠点を移し、モノづくりの空洞化が叫ばれる中、国内で民間航空機を完成まで手掛けることは「積年の政策課題」(経産省幹部)だった。雇用確保や、先端技術の開発で他産業への波及効果も期待できる。

 政府は事業化が決定した08年度から15年度まで、操縦システムや空力設計の研究開発などの名目で総額508億円の補助金を投じた。今年7月策定の成長戦略でも、スペースジェットを含む航空機産業の拡大を掲げた。

 スペースジェットは当初から商業運航に必要な「型式証明」の取得が最大のハードルだった。審査する国土交通省も国産ジェット旅客機の実務は初めて。米当局の教えを請い、手探りで着手した。スペースジェットは開発に手間取りながらも15年に初飛行を果たし、飛行試験を積み重ねたが審査は遅々として進まない。三菱重工からは「国交省の審査体制が脆弱(ぜいじゃく)だ」との不満が漏れた。

 型式証明は経験豊富な海外メーカーですら取得に5~10年はかかる。さらに米当局は開発側の裁量を重視し、安全性を証明する具体的な方法は定めていない。明確な「方程式」がないまま、設計変更を繰り返し求める当局側の「千本ノック」(経産省幹部)に開発サイドのいらだちは募った。

 誤算続きだった国産ジェットだが「4000時間近く飛行し、ある程度の機体はできた」(三菱重工の泉沢清次社長)。開発は凍結する一方、今後も型式証明の取得作業を続けることは「日本での完成機事業を諦めない」(関係者)意思の表れでもある。まいた種をどう生かすか、国の産業政策の真価が問われる。

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