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興味が尽きないプロ野球“満員”実験 (2/2ページ)

 ◆ファンの意識改革

 大人数の集客や滞留があるスポーツイベントの会場施設には、観客収容規模に応じた「流れ」と「たまり」に対応し得る余白が必要である。ちなみに、余白というのは、余っている、ということではなく、余裕がある、という意味である。客席背後のコンコースエリアの幅員、エントランスロビーの広さなどのことだが、東京ドームでは、意外にロビースペースがない。入場口が全方位にあるからだが、人の滞留スペースが分散されることを念頭にした設計となっており、特定の場所に滞留が集中することが想定されていない。こうしたことも踏まえて、観客を意図的な誘導によって、人の流れを規制したり、逆につくり出したりしていく運営能力こそが、最良のリスク対策になる。

 感染症リスクに対応する最善策は、人に声を発することをさせないこと、手を接触させないこと、である。飛沫(ひまつ)感染を防ぐことが大事なのであるから。しかし、スポーツ観戦は、選手たちのプレーに興奮し、声を上げて喜びあうから楽しさも倍増する。座席間隔をどうしようが、そんな興奮状態では、飛沫を防ぐことはマスクをしていても無理である。つまり、観客の自制した行動に委ねるしか、感染リスクを低下させる方法はない、と私は考える。

 よって、今回の実証実験で得られた結果をもって、ファンに自制していくべき行動を明示して、ファン自身にそのことを理解してもらうのが一番の対策になるのではないだろうか。日本のプロスポーツの日常を取り戻すのは、試合運営者や試合会場の管理者ではなく、ファンの意識改革が鍵を握っているのである。

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【プロフィル】今昌司

 こん・まさし 専修大法卒。広告会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。16年から亜細亜大経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師も務める。

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