ソニーは、新型コロナウイルスの感染が広がる中でも「巣ごもり需要」の拡大などで好調なゲーム事業を牽引(けんいん)役に堅調な業績を維持している。
「多様な事業ポートフォリオ(組み合わせ)が当社のレジリエンス(回復力)を高め、新たな事業拡大の機会を与えてくれる」。ソニーが10月28日に行った決算記者会見。十時(ととき)裕樹副社長はコロナ禍や米中貿易摩擦といった「非常時」の経営に自信を見せた。
同日発表した2020年9月中間連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比7.1%増の5461億円と、上半期として過去最高を更新した。
収益増に大きく貢献したのは、売上高の約3割を稼ぐゲーム事業だ。「プレイステーション」の利用者が加入し、オンライン対戦などができる定額制サービスは、9月末時点の会員数が前年同月比24%増の4590万人に急増。PS5発売後はさらなる上積みが見込まれる。安定した収益を継続的に得られる定額制サービスの恩恵は、音楽事業でも楽曲供給の拡大という形で表れている。
巣ごもりでテレビなどの家電販売も堅調。赤字を垂れ流していたスマートフォン端末は黒字転換を果たした。グループ会社が東宝と配給するアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が、10月16日の公開から24日間で200億円を突破するなど、下半期以降の好材料も多い。
しかし、懸念材料がある。スマホに搭載される半導体の画像センサー事業だ。
ソニーは画像センサーで約5割の世界シェアを握るが、米政府の輸出規制で中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)向けの販売が減少。下位のスマホメーカーを開拓した韓国サムスン電子の猛追にも直面している。華為向けの一部は取引再開許可を得たもようだが、本格的な収益回復は22年度になるという。
十時氏は「顧客拡大や分散は一定の成果が出始めている」と話す。とはいえ、相手は資金力で上回るサムスンだけに、少しでも戦略を誤れば大きなダメージを負いかねない。 (井田通人)