日産自動車が2021年3月期の連結業績予想を上方修正したのは、過度に台数を追わずに商品の品質を向上させる戦略が成果を出し始めていることを示している。経営再建に取り組みながら新車を次々と投入し、22年3月期に黒字化を図る。環境対応車の需要増が期待できる中国では生産能力を増強し、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動化技術で攻勢をかけたい考えだ。
「販売の質の向上は着実に進んでいる」。12日にオンラインで会見した日産の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)はこう自信をみせた。
日産は10月に米国で発売した新型「ローグ」の販売が好調で、日本でも新型コンパクトカーを年内に発表する予定。20年度販売台数の予想は前回予想の412万5000台から416万5000台に上方修正した。
20年度末までに固定費を18年度比で3000億円削減する計画も順調に進んでいるという。
電動化の推進も大きな課題だ。日産は23年度までに8車種を超えるEVを投入し、年間100万台以上の電動化技術搭載車の販売を目指している。最大市場の中国では来年からHVが「低燃費車」として優遇されることも追い風になりそうだ。
一方、12日に出そろった国内自動車大手7社の20年9月中間連結決算は新型コロナウイルスの影響で、いずれも減収減益となった。ただトヨタ自動車をはじめ4社が黒字を確保する一方、日産のほか、販売台数の回復が鈍いマツダと三菱自動車が赤字を計上し、はっきりと明暗が分かれた。
21年3月期の業績予想は、主力市場の北米で販売が回復しているトヨタをはじめ5社が上方修正。赤字を見込むマツダと三菱自は据え置いた。スズキはこれまで未定としていたが、主力市場のインドが回復基調にあり、売上高が前期比14.0%減の3兆円、最終利益が18.0%減の1100億円になるとの見通しを示した。(宇野貴文)
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■自動車大手7社の2020年9月中間連結決算
企業 売上高 営業損益 最終損益
トヨタ 11兆3752(▲25.9%) 5199(▲62.8%) 6293(▲45.3%)
ホンダ 5兆7751(▲25.2%) 1692(▲64.2%) 1600(▲56.6%)
日産 3兆926(▲38.2%) ▲1587( - ) ▲3299( - )
スズキ 1兆2702(▲27.6%) 749(▲36.8%) 543(▲31.5%)
スバル 1兆2183(▲24.1%) 306(▲67.7%) 237(▲65.3%)
マツダ 1兆1157(▲34.6%) ▲528( - ) ▲930( - )
三菱自 5748(▲49.0%) ▲826( - ) ▲2098( - )
※単位:億円、カッコ内は前年同期比増減率、▲は赤字またはマイナス、-は比較できず