宇宙飛行士の野口聡一さん(55)が15日、米企業スペースX社が開発した新型宇宙船クルードラゴンの運用初号機に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)へ出発する。今回の打ち上げで、これまで国家が担ってきた有人宇宙開発に民間企業が初めて本格的に参入することになり、誰もが宇宙に行ける「宇宙旅行時代」の幕開けとなる。
「歴史的転換期」
「有人宇宙計画で本格的に民間企業が主導権を握る過渡期。歴史的な転換期に日本人として運用に携われるのは大きなメリットだ」
出発を前にした9月、野口さんはオンライン記者会見で今回の飛行の意義についてこう語った。
有人宇宙開発の歴史は、第2次世界大戦後の覇権争いから始まった。1950年代後半、冷戦が続く米国とソ連(当時)の間で開発競争が激化。ソ連が61年にユーリイ・ガガーリンによる人類初の宇宙飛行に成功すると、先手を打たれた米国はアポロ計画を打ち出し、69年には人類初の月面着陸という偉業を成し遂げた。
黎明期にあたる10年間の有人宇宙開発の進展は目覚ましく、まさに2つの大国のプライドをかけた激しい戦いが繰り広げられた。
70年代に入ると、米ソがそれぞれ独自に宇宙ステーションを打ち上げるなど開発の規模が拡大。一方で、米国が84年にISS建設計画を発表し、日本や欧州、カナダが参加、のちにロシアも加わり、計15カ国による国際協力で2011年に完成した。ISSは各国が運用し、宇宙環境下での科学実験などが行われている。
「民間委託」に舵を切る
ISSの運用期間は段階的に延長され、各国は24年までの継続で合意。25年以降も延長に向けた動きはあるものの、現在のところ方向性は定まっていない。
背景にあるのは、米国がアポロ計画以来、約半世紀ぶりとなる有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」の存在だ。最終の目的地は火星で、日本や欧州なども協力。米国をはじめ各国はアルテミス計画に予算を振り向けるため、膨大な維持・運用費のかかるISSの民間移管にかじを切りつつある。