金融

コロナ第3波で先細り懸念 GDP、10~12月期以降は成長鈍化か  (1/2ページ)

 16日発表の7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率21.4%増と大幅に上昇したが、感染第3波が広がる中で10~12月期以降は回復が鈍化し、新型コロナウイルス流行前の水準を回復するのは早くて再来年とみられる。景気を刺激する2020年度第3次補正予算案の編成は不可欠だ。ワクチン開発の期待で株式市場はバブル経済崩壊後の最高値に沸くが、コロナ禍の「終わりの始まり」を当て込むのは気が早い。

 成長率が急上昇したのは戦後最悪の急落となった4~6月期(前期比年率28.8%減)の反動だ。金額ベースでは4~6月期に約42兆円低下した後、7~9月期の上昇は23兆円止まりで半分程度しか穴埋めできなかった。民間予測では10~12月期の成長率は4%程度に縮小し、その後も1~2%と伸び率が先細る見込みとなっている。

 7~9月期の実質成長率はユーロ圏が61.1%増、米国が33.1%増と日本より大きい。都市封鎖(ロックダウン)に踏み切った欧米は4~6月期の落ち込みが日本より大きく、反動も一層大きかったのは事実。ただ、「コロナ前まで成長を押し上げていた訪日客需要の消失と、人口減少という構造的問題が日本の回復力を弱めている」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員)との側面は否めない。

 菅義偉政権が3次補正の編成などを通じて、官民のデジタル化や「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ」の実現を強く後押しするのは、海外に比べ歩みが遅い日本経済への危機感が背景にある。厳しい目標を掲げることで設備投資などの民間需要を呼び起こし、景気停滞を防ぐ“ショック療法”の思惑がありそうだ。

 一方、実体経済の回復の弱さとは裏腹に株式市場は急騰している。コロナワクチンの開発が進んで自粛生活がついに終わる期待感を市場関係者が織り込み、日米欧の中央銀行による大規模金融緩和で放出された大量のマネーが流れ込んだ。

 だが、数カ月で開発したワクチンだけに後遺症の有無を含む安全性の検証は難しい。「やむを得ない事情がある人以外は接種せず、新しい生活様式を当面は受け入れるとみるのが自然」(みずほ証券の小林俊介チーフエコノミスト)だ。

 感染第3波で先進国の状況はむしろ悪化し、欧州は都市封鎖の復活で10~12月期に再びマイナス成長の「二番底」に陥りそうだ。国内でも感染再拡大に加えコロナ禍によるリストラが大企業の正社員に広がり、9月時点で3%の完全失業率も悪化が避けられない。

 今後、こうした現実が直視されれば株価は急落する恐れすらある。日本経済の二番底を防ぎ、無事に越冬するためにも感染防止策を再度徹底する必要がある。(田辺裕晶)

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