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札幌の喫茶店が「空間価値」で躍進 低価格の波にのまれず

 人が集う拠点をつくりたいと24年前に初めて札幌市に喫茶店を出した「アトリエ・モリヒコ」は今では14店舗を展開し、大手食品会社と商品開発するなど北海道を代表する飲食事業会社に成長した。躍進の背景には当時珍しかった居心地のいい空間でゆっくりコーヒーを味わえるという「空間価値」に商機を見いだした先見の明があった。

 札幌の住宅街の車1台がぎりぎり通れるような路地裏にある古民家を改装した1号店。床や壁に木のぬくもりを残しつつ、モダンな家具が置かれた店内はコーヒーの香りで満たされる。「財布にコーヒー代しかなくても来てよかったと思ってもらえる店でありたい」。モリヒコ創業者の市川草介代表は言う。会員制交流サイト(SNS)では「行くたびに感動する」などの投稿が相次ぐ。

 祖父が手びきのミルでコーヒー豆をひくのを幼少期から見てきた市川さんは1990年に札幌にデザイン事務所を開業。一方で人が集う場所をつくりたいと古民家を自ら改装し、96年に1号店を開店した。

 心掛けたのはあえてマーケティングをしないこと。90年代に日本経済が長期低迷に突入し外食の低価格化が急速に進んでいたが、店舗のデザイン性を追求するとともにコーヒー1杯500円以上の価格帯を維持。3年間は赤字続きだったが、次第にしゃれた店でおいしいコーヒーを味わいたいと全国から客が足を運ぶようになった。

 2006年には札幌中心部の大通公園近くに2号店を開店し、その後、菓子製造などにも乗り出した。08年のリーマン・ショックでは周囲が苦戦する一方、順調に売り上げを伸ばした。市川さんは「お金の使い道が厳選される中、満足行く店として選ばれたと思う」と振り返る。今では各店に行列が絶えず、東京の百貨店の催事場に出店すれば入れたてのハンドドリップコーヒーを求めて長い行列ができるまでに。

 今年10月には札幌の商業施設内にホットケーキ専門店も開店。新型コロナウイルス禍で厳しい経営の中でも攻めの姿勢を貫く。市川さんは「1号店にも最初から客が来ることはなかった。ここでもリピーターを増やし繁盛店にしたい」と話す。コロナ収束後は海外進出も本格化させる方針だ。

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